2022 Fiscal Year Annual Research Report
ナノプラスチックのベクター効果:生態影響評価に向けた数理モデルの構築
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22J13703
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高井 優生 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロプラスチック / ベクター効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、水環境ではマイクロプラスチック(MP)による汚染が進行しており、MPによる生物への影響解明が喫緊の課題となっている。中でも、MPの生体影響としてMPが化学物質の取り込みを促進するベクター効果が注目されている。2022年度は微細MPの水中濃度とそのベクター効果の関係を評価することを目的とし、ジャワメダカを試験魚として、多環芳香族炭化水素アントラセン(ANT)および粒径2 umのポリスチレンMP(PS-MP、低、中、高濃度)の共曝露試験を行った。その結果、ジャワメダカのANT体内濃度は曝露期間全体を通してANT単独区と比べてANT+中濃度PS-MP曝露区およびANT+高濃度PS-MP曝露区で高かった。ANTおよびPS-MPの1-コンパートメントモデルを用いて解析した結果、水中のPS-MP濃度が高くなるにつれてジャワメダカのANT取り込み量が多くなることが分かった。本モデルを用いて実環境中のANT濃度(1.6 ng/L)で予測を行った結果、水中の2-um PS-MP濃度が270 ug/Lを超えると、ANT体内濃度がジャワメダカの遊泳行動に影響を及ぼす濃度にまで達すると予想された。しかし、現在の環境中で微細MP(0.3 um以下)の濃度は4.2 ug/L程度であるため、MPのベクター効果が魚類に与える影響は実環境ではまだ極めて微弱であると予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アントラセンとPS-MPの共曝露試験により、アントラセン吸着PS-MPがジャワメダカへのアントラセン蓄積を促進することを明らかにした。また、1-コンパートメントモデルを使用した解析により、簡易的にMPのベクター効果を評価・シミュレーションする方法を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度の成果より、PS-MPがジャワメダカへのアントラセン蓄積を促進することが明らかになった。2023年度は疎水性の異なる混合PAHsを用いてPS-MPとの共曝露試験を行い、PS-MPのベクター効果とPAHsの疎水性との関係を評価する。
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Research Products
(3 results)