2022 Fiscal Year Annual Research Report
界面アーキテクトニクスによる多糖ナノファイバー単層膜の構築と新奇足場機能の創出
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22J13972
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石田 紘一朗 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 表面自由エネルギー / Langmui-Blodgett / 摩擦 / 吸着 / ナノコンポジット / 膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
セルロースナノファイバー(CNF)は樹木から得られる再生可能資源であり、その優れた材料特性から産業的にも大きな注目を集めている。本研究課題では、CNFの吸着・接着性を定量的に表し、材料設計に活用することを目的とした。この吸着性を表すパラメータとして表面自由エネルギー(SFE)と呼ばれる物理量があるが、固体のSFEは直接求めることができないため、SFEが既知の液体の接触角から間接的に評価する方法が一般的である。しかし、ナノサイズの固体粒子に関しては粒子間への液体の浸透等の問題から従来の評価法をそのまま適用することは困難であった。 そこで、CNFの膜構造を制御する手法について、申請書に記載した研究実施計画に基づいて研究を行い、液体の浸透の影響や濡れ挙動を検討した。CNF膜を単層-数十層の範囲で正確に制御する手法を開発し、液体の内部浸透の影響を明らかにした他、膜表面粗さの補正を行うことによってCNFのSFEを評価した。得られたSFEは実際のCNFの吸着挙動を良好に表していた。即ちCNF吸着の可否を推定したり、その吸着の駆動力がどのような相互作用に基づくか評価可能であった。 CNFは高強度材料であるため、他の材料の補強材としての複合化が盛んに研究されている。そこで、CNFの表面化学改質によってSFEを制御し、様々な材料とCNFの吸着を介した複合化を可能にすると共に、吸着機構がどのように変化するかを明らかにした。 また、CNF膜の構造制御を行う過程において、CNFが高度に配向しつつ屈曲したCNF単層膜の構築に初めて成功すると共に、その膜表面において配向方向に応じた異方的摩擦特性が発現されることを明らかにした。これらの手法はCNFに対するものであるが、カーボンナノチューブ等の他のナノ材料に対しても適用可能であることから、広範な分野への応用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究申請書の1年目の計画としては、膜厚制御されたセルロースナノファイバー膜の調製法の確立と、それを用いたプローブ液体の浸透度の解明及び表面自由エネルギーの評価について記載していたが、これらについては順調に進展し、完了している。また、これらを達成する上でセルロースナノファイバー単層配向膜の構築にも成功しており、原子間力顕微鏡を用いた水平力測定によってこの配向が異方的な摩擦特性を発揮することを明らかにした。さらに、この膜に導入する官能基量を制御することによって水の接触角が10-100度の広い範囲で調整可能である。これらはの知見は、摩擦力の違いを利用した細胞遊走の制御において有用であると考えられる他、細胞接着性は基板の濡れ性(水の接触角)と相関があることが知られているため、2年目の研究を行う上でも重要な知見であると考えられる。したがって、2年目の研究計画として申請書に記載した通り、細胞培養基材としての応用展開に取り組んでいきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2 年目はセルロースナノファイバーに加え、高い生理活性を示す多糖類であるキチン・キトサンのナノファイバーやタンパク質のコラーゲンナノファイバーを膜化し、足場材料としての研究を行なう。具体的な展開としては膜を培養基材とした細胞培養を試みる。まず、表面圧や圧縮速度等の製膜時のパラメータの他、ナノファイバーのサイズ制御や塩濃度勾配からナノファイバー膜の配向制御を試みる。これにより、様々な配向パターン(屈曲度・配向ドメインのサイズ)を有する膜を構築し、繊維の配向が細胞伸長や遊走挙動へどのように影響するかを明らかにする。 また、細胞接着については一般的な顕微鏡法による分析だけでなく、原子間力顕微鏡の探針に細胞断片を固定し、探針-足場間距離に応じた引力・斥力の測定から接着挙動を追跡する他、水晶振動子マイクロバランス法による培地中のタンパク質吸着機構の解析からも試みる。
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