2022 Fiscal Year Annual Research Report
外エナメル上皮細胞の分化誘導法確立を目指した新規マーカー遺伝子の探索
Project/Area Number |
22J20724
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲田 幸織 九州大学, 歯学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 中間層細胞 / 星状網細胞 / 新規マーカー遺伝子 / 先天歯 / サイトケラチン |
Outline of Annual Research Achievements |
歯原性上皮細胞の新規マーカー遺伝子の探索を目的とし,歯原性上皮細胞の網羅的遺伝子発現解析のため,生後1日齢マウス臼歯を用いてシングルセルRNAシークエンス(scRNA-seq),および細胞種類毎の発現遺伝子を抽出し,歯胚に発現するサイトケラチンのスクリーニングを行った。次に,生後1日齢切歯歯胚及び臼歯歯胚のパラフィン切片を作成し,蛍光免疫染色にて候補遺伝子の局在を検討した。また,発生過程のマウス臼歯からmRNAを抽出し,qRT-PCRにて候補遺伝子の発現解析を行った。加えて,サイトケラチンに関連する歯科疾患を疾患データベースOMIMにて検索した。 結果として,scRNA-seqでは,歯原性上皮細胞の集団は,エナメル芽細胞系列,中間層・星状網細胞,外エナメル上皮細胞に分類された。このデータ上でサイトケラチンファミリーの発現量を検討したところ,サイトケラチン(Krt)5,Krt14,Krt17が歯原性上皮細胞に高発現であり,特にKrt17は中間層・星状網細胞に発現することが示された。そこで,Krt17の歯胚組織内での発現パターンを明らかにするために蛍光免疫染色を行った結果,Krt17が中間層及び星状網に局在することが明らかとなった。次に,サイトケラチンの歯の発生過程における発現量の変化をqRT-PCRにて検討したところ,Krt17は形態形成期から分泌期に高発現であり,他のサイトケラチンとは異なる発現パターンを示した。さらに,OMIMにてサイトケラチンに関わる歯科疾患の検索を行った結果,Krt17の遺伝子変異に起因する症候群である先天性爪甲厚硬症及び多発性脂腺嚢腫において,両疾患ともに先天歯を併発することが明らかとなった。 現時点での考察として,Krt17は中間層および星状網細胞の新規マーカー分子として有用であり,本疾患の遺伝子異常は先天歯に関連することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
歯の発生過程における発現パターンに関して、実際にマウス歯胚を用いてRT-qPCR、in situ hybridizationなどで局在を確認し、また、細胞の分化誘導法の確立を目指し、候補遺伝子の発現を誘導する増殖因子のスクリーニングを行った。 歯原性上皮細胞株であるSF2は未分化歯原性上皮細胞の状態で維持することが可能であり、増殖因子などの刺激によりエナメル芽細胞や中間層細胞を含む複数種類の細胞種へと分化誘導することが可能であるため、外エナメル上皮細胞の解析にも使用した。 増殖因子は歯の発生に重要であるBMPファミリー、TGFβファミリー、Wntファミリーなどを使用し、添加後24,48,72時間でのmRNAを回収し、遺伝子発現変化をRT-qPCRにて検討を行った。 以上より、ほぼ計画通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ex vivoの器官培養系を用いて歯胚の形態形成や分化に与える影響を検討する。 器官培養に関しては、形態形成が評価できる胎生14日齢のマウス歯胚を摘出し、培地に候補遺伝子のsiRNAを添加後、1週間から10日間培養し評価する。 器官の大きさに与える影響は実体顕微鏡下にて、siRNA添加後24時間毎に評価する。 遺伝子発現変化は、培養後10日にRT-qPCRにてmRNAレベルの評価を行い、加えて培養歯胚の凍結切片を作成し、免疫染色でタンパク質レベルの検討を行う。
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