2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト胎生期神経幹細胞の特異性表出機構の解明とその応用によるマウス神経幹細胞ヒト化
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22J21029
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中川 拓海 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 大脳皮質発生 / 神経幹細胞 / CRISPR/Cas9 / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
CRISPR/Cas9 スクリーニングの次世代シーケンス(NGS)データを用いて、ノックアウト(KO)されることで神経幹細胞がニューロンに早期分化する遺伝子を探索した。続いて、解析の結果得られた遺伝子のうち、公共遺伝子発現データを元にして、胎生期神経幹細胞においてヒトでマウスより発現量の高い遺伝子に絞り込んだ。 絞り込んだ候補遺伝子のうち、ヒト・マウス神経幹細胞間での発現量の差が有意であった数遺伝子の発現を、ヒトiPS細胞由来神経幹細胞(AF22)で減弱させ、AF22が早期に増殖を止めニューロンに分化するようになるのかをクローナル解析を行い検討した。その結果、遺伝子Xを標的とするshRNAを発現させたときに、著しいクローン数の減少が見られたため、以降の実験では遺伝子Xに焦点を当てることとした。 続いて、遺伝子Xの発現をAF22で減弱後に分化誘導し、免疫染色を行ってニューロンへの分化能の評価を行った。結果、遺伝子Xの発現を減弱させたAF22は、コントロールよりもより多くのニューロンを産生していた。以上の結果から、遺伝子Xはヒト神経幹細胞が未分化性を維持し、長期間ニューロンを産生することができるという機能において重要な役割を担っていると考えられた。 今後は、遺伝子Xがどのようにヒト神経幹細胞の長期間のニューロン産生を可能にしているのか、そのメカニズムを明らかにしていく。そのためにまず、遺伝子Xの発現を減弱させたAF22でRNA-seqを行い、発現が変動した遺伝子群を同定することにより、遺伝子Xがどのような遺伝子発現を制御しているのかを調べる予定である。また、胎生期マウス神経幹細胞において遺伝子Xを過剰発現することで、その増殖やニューロン産生期間の延長が観察されるかどうかも調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、令和4年度は①ヒト神経幹細胞の持続的ニューロン産生を可能にする遺伝子の同定と②同定遺伝子が神経幹細胞のニューロン分化能に与える影響の検討、及びそのメカニズムの解明を予定していた。①については、CRISPR/Cas9 スクリーニングデータ解析用のソフトであるMAGeCKを用いることで、KOすることにより、神経幹細胞の分化誘導後にニューロンによりエンリッチしたgRNAが標的とする遺伝子を同定することができた。そして、ヒト・マウス胎生期神経幹細胞の公共遺伝子発現データを用いて、ヒトでマウスより発現量の多い遺伝子に絞り込んだ。絞り込みの結果、複数の遺伝子が候補に挙がったため、ヒト・マウス間の遺伝子発現差がより優位なものをいくつか選択した。②については、クローナル解析の結果いくつかの遺伝子の発現を減弱したAF22の増殖量が減少したので、その中でも産生されたクローンの数が大幅に減少し、いくつかのクローンがニューロン様の形態を示した遺伝子Xを選択した。遺伝子Xの発現量を減弱させると、通常ではほとんどニューロンに分化しない日数でも、AF22が多くのニューロンに分化していたため、遺伝子Xは今回目的とする機能を持った遺伝子の候補であると考えている。以上により、本研究計画は概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子Xを電気穿孔法にてマウス胎生期神経幹細胞に過剰発現させ、マウス神経幹細胞の増殖及びニューロン産生量が増加するのかを調べる。 また、遺伝子Xの発現を減弱させたAF22でRNA-seq及びATAC-seqを行い、発現が変動した遺伝子群やクロマチン状態が変化したゲノム領域を同定することで、遺伝子Xがどのような遺伝子やエピゲノムを制御しているのかを調べる。加えて、ヒト・マウス間で発現量に差がある遺伝子Xの遺伝子座周辺にヒト特異的な発現制御領域が存在するか調べる予定である。
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