2022 Fiscal Year Annual Research Report
エピゲノム破綻から見るゲノム安定型胃癌の発癌機構と腫瘍内不均一性獲得原理の解明
Project/Area Number |
22J21161
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井野 雄貴 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 腫瘍内不均一性 / エピジェネティクス / DNAメチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、悪性腫瘍エピゲノムの空間情報を取得するために、FFPE(ホルマリン固定パラフィン包埋)アーカイブ由来のDNAからメチローム情報を取得するための手法の開発に取り組んだ。 DNAメチル化を解析するための手法として全ゲノムバイサルファイトシーケンシング(WGBS)がある。バイサルファイト処理されたDNA(BS-DNA)のサイズ分布は500塩基長から数千塩基長であるが、現行のWGBSライブラリのリード長は数百塩基長にとどまっている。そのため、同一染色体上で連鎖しているメチル化パターンの決定や、インプリント遺伝子のアレル識別が困難であり、現行法よりもリード長が長いWGBSライブラリ作製法が待たれている。また、本研究は腫瘍特定領域のゲノム情報・エピゲノム情報の取得を前提としているため、微小量のサンプルを増幅可能なライブラリとする必要がある。以上を踏まえると、BS-DNAの全長の相補鎖の両端にシーケンスアダプターを結合する新しい戦略が必要となる。 まず、FFPEを由来としないBS-DNAについて、その全長を合成することができるDNAポリメラーゼを探索した。そのために、BS-DNAの3′末端に既知配列のアダプターを連結し、その相補鎖をプライマーとして利用するアッセイ系を用意した。その系でDNAポリメラーゼの合成能を評価すると、損傷乗り越え型DNAポリメラーゼIVのホモログが他のDNAポリメラーゼよりも伸長効率が高いことがわかった。また、鋳型鎖と新生鎖を別々の蛍光で標識し、新生鎖のサイズ分布が鋳型BS-DNAと同様であることを確認した。次に、伸長後の二本鎖DNAの伸長末端にアダプターを結合させ、新生鎖の両端にアダプターを結合させることを試みた。そのようにして作成されたライブラリをPCR反応にかけてサイズ分布を確認すると、500塩基長の増幅されたライブラリを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸菌を用いてクローニングしたDNAポリメラーゼの活性にロット差があり、安定した条件の確立に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、腫瘍FFPE組織の特定領域から回収したゲノムDNAに対し上記アプローチを適用するための条件の最適化と実際のデータ取得を行う。組織学的に特徴的な細胞群に特有のメチローム情報を取得し、悪性腫瘍の発症と進行に関わるメチローム変異を膨大なFFPEアーカイブから同定する新たな手法の構築を進める。
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