2023 Fiscal Year Research-status Report
ACE2のユビキチン化を介したコロナウイルス感染機構の解明と創薬への挑戦
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22KJ2499
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
岡元 拓海 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | COVID-19 / SARS-CoV-2 / ACE2 / ユビキチン / エンドサイトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
SARS-CoV-2感染時のACE2の近傍タンパク質の同定のため、ビオチンリガーゼを融合したACE2を発現させ、近位ビオチン標識法を行った。ACE2の細胞質側にビオチンリガーゼAPEX2を融合させたAPEX2-ACE2安定発現細胞を用いた。APEX2はビオチンフェノール存在下で1分間の過酸化水素処理によって、その近傍のタンパク質のビオチン化を触媒する。ビオチン化タンパク質をストレプトアビジンビーズにより回収し、質量分析を行ったところ、ACE2の近傍タンパク質としてユビキチンリガーゼを12種類、脱ユビキチン化酵素を11種類同定した。同定したユビキチンリガーゼの中から、ACE2のエンドサイトーシスと分解に関与するものを絞り込むために、siRNAを利用したノックダウンを行った。APEX2-ACE2を発現した細胞において各ユビキチンリガーゼをsiRNAによりノックダウンした結果、ノックダウンによってスパイクタンパク質により誘導されるACE2の分解が抑制され、ACE2発現量の有意な増加を示すユビキチンリガーゼを4種同定した。さらに、スパイクタンパク質によるACE2の局在変化についても検証した結果、4種のうち2種のユビキチンリガーゼをそれぞれノックダウンした細胞ではスパイクタンパク質によって増加するACE2とEEA1との共局在の割合が減少した。この2種を同時にノックダウンした場合、それぞれの単独と同等にエンドサイトーシスが減少した。以上の結果から、SARS-CoV-2感染時、ACE2のエンドサイトーシスはユビキチン化によって制御されており、このユビキチン化の制御に関与することが示唆されるユビキチンリガーゼを同定した。今後はACE2の細胞膜からリソソームへのメンブレントラフィックをより理解するためにドイツのOsnabruck大学へ留学し、研究を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
APEX2を融合したACE2発現細胞を用いて、ACE2の近傍たんぱく質の同定を質量分析により行い、ACE2の近傍タンパク質としてユビキチンリガーゼを12種類、脱ユビキチン化酵素を11種類同定した。同定したユビキチンリガーゼにおいてノックダウンを行い、スパイクタンパク質存在下でのACE2の発現量の変化および局在変化を検証することで、12種類から2種類に絞り込んだ。同様の検証方法で脱ユビキチン化酵素についても検証を進めている。以上より、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、PIKfyve阻害剤であるApilimodが、SARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害する一定の効果を示すことが報告された(Proc. Natl Acad. Sci. USA, 117, 20803&-20813, 2020)。PIKfyveはPI5PとPI(3,5)P2を合成するphosphoinositide 5-kinaseであり、内膜の恒常性を制御している。ACE2にSARS-CoV-2が結合し、ACE2が細胞膜からリソソームへ移行することでSARS-CoV-2が細胞に感染する。これまでの研究で、ACE2の細胞内への局在化にユビキチン化が関与していることを示してきたが、リソソームへの移行メカニズムについては不明な点も多い。リソソームやエンドソームは精巧にその膜組成が制御されており、その膜組成の変化によってエンドソームからリソソームへ移行することが知られている。PIKfyveもその過程に関与していることが示唆されている。そこで、このACE2の感染機構をより詳細に理解するため、メンブレントラフィックについての研究を行う。そのために、メンブレントラフィックについて多くのimpressiveな研究を行っているドイツのUngermann教授の研究室へ行き、PIKfyveの酵母におけるホモログであるFab1について研究を行う。
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Causes of Carryover |
条件検討が予想以上にスムーズに進み、試薬、消耗品、解析費の節約が出来た。また、参加学会も近い場所での開催であったため旅費の節約も出来た。2024年度はドイツでの研究活動となるため、必要があれば、日本からドイツへ試薬を送ることも想定される。そのため、繰り越した分は当初予定していなかった海外への輸送費などの充填に利用する予定である。
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