2022 Fiscal Year Annual Research Report
Identification and functional characterization of proteins that regulate the interaction between Trypanosoma cruzi and host mitochondria.
Project/Area Number |
22J00948
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagasaki University |
Research Fellow |
林下 瑞希 長崎大学, 熱帯医学・グローバルヘルス研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | シャーガス病 / クルーズトリパノソーマ / ミトコンドリア / 寄生戦略 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
寄生虫、細菌、ウイルスなどは、宿主細胞内でタンパク質を介して宿主ミトコンドリアと相互作用することが知られている。クルーズトリパノソーマ(T. cruzi)は病原性寄生虫の一種で「顧みられない熱帯病」に指定されるシャーガス病を引き起こす。T. cruziの生活環で宿主細胞内のステージはアマスティゴート(AMA)と呼ばれ、宿主細胞内で急激に分裂・増殖し宿主細胞の破壊を繰り返すことで病原性を示す臨床的に最も重要なステージである。最近の先行研究からAMAも宿主ミトコンドリアと相互作用することが報告されたが、その意義や分子機構は明らかでない。 本研究では、AMAと宿主ミトコンドリアのタンパク質ダイナミクスに着目して両者間相互作用の分子機構の解明を目指す。質量分析法を用いて相互作用関連タンパク質候補を網羅的に同定し、それらの既知の機能を手掛かりに関連性の高いタンパク質に焦点を絞り機能解析を行う。 本年度は、昨年度に引き続き発光(RE9h)と蛍光(mNeonGreen)を同時に検出できる遺伝子組換え原虫を作製し各種実験を開始した。また、ワークショップで本研究の発表を行ったところ、AMAと宿主ミトコンドリアの接触を観察するために適した抗体を紹介・分与して頂くことができ、免疫染色でより詳細にAMA鞭毛とミトコンドリアの相互作用を観察できる状況となった。また、寄生虫学会において質量分析を行っている先生と知り会い、本研究の質量分析の委託先に適した機関を紹介頂いた。現在、委託に向けてサンプルの調整に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はCrispr/Cas9系を用いてmNeonGreen遺伝子ノックアウトを試みた。ここで用いた手法はフランスの共同研究グループによりトリパノソーマ科原虫のLeishmaniaとTrypanosoma bruceiを標的として確立された系である。本年度は、前述のフランスのグループから博士課程学生が研究室に短期滞在で来ていた為、まず、彼女からノックアウトの手法を習得することを優先した。 本研究課題では、病原体-宿主の相互作用について、関与するタンパク質群を把握することで寄生現象を理解することを目指す。まず、原虫と宿主ミトコンドリア双方の生理的に重要なタンパク質候補を質量分析により絞り込み、原虫側のタンパク質はCrispr/Cas9系用いてノックアウト株を、宿主細胞側のタンパク質はsiRNAを用いてノックダウン細胞を作製する。そのために、効率的に原虫の遺伝子をノックアウトできることは必須である。 昨年度に作製を終えたRE9h-mNeonGreen発現原虫を用いて、試験的にmNeonGreen遺伝子をノックダウン標的に設定しT. cruzi におけるCrispr/Cas9系の条件検討を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
感染細胞から宿主ミトコンドリアとAMA の集合体(①)を単離し、質量分析法(LC/MS-MS;外部委託)を用いてAMA-宿主ミトコンドリア間相互作用に関与する候補タンパク質を網羅的に得る。その際、比較対象として非感染宿主細胞から単離したミトコンドリア(②)と、酸性条件下で培養する事で得た細胞外AMA(③)を用いる。 続いて上記①と②③を比較し、発現に違いが見られるタンパク質を選出する。既知のタンパク質機能を手掛かりに、AMAと宿主ミトコンドリアの両サイドから生理的に重要なタンパク質を探索する。その際既知のタンパク質機能は、UniProtなどのデータベースを用いて調べる。 網羅的に得たAMA-宿主ミトコンドリア相互作用関連タンパク質候補から、ミトコンドリア移行シグナルや膜貫通領域を有するタンパク質を優先的に選別する。 原虫側のタンパク質はCrispr/Cas9系用いて標的分子のノックアウト株を、宿主細胞側のタンパク質はsiRNAを用いてノックダウン細胞を作製する。ノックダウンとノックアウトの確認はウェスタンブロッティング法と免疫染色法により特異的抗体を用いて行う。 作製した遺伝子組換え原虫、変異宿主細胞を用いて感染実験を行い、AMAの増殖能や感染能への影響を観察し、相互作用関連タンパク質候補の個々の機能評価を行う。最終的に、AMA-宿主ミトコンドリア相互作用を担うタンパク質を見出し、T. cruziの寄生環境適応機構におけるAMA-宿主ミトコンドリア相互作用の意義を明らかにする。
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