2023 Fiscal Year Research-status Report
tモチーフを用いた正標数多重ゼータ値またその変種の独立性に関する研究
Project/Area Number |
22KJ2534
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原田 遼太郎 東北大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 関数体 / t加群 / tモチーフ / 多重ゼータ値 / ポリログ / 線型独立性 / 正標数 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は, 前年度にも報告した, Pennsylvania大学のYen-Tsung Chen氏との共同研究を完成させ共著論文を書き上げた. 一方で名古屋大学の松月大知氏と共同で, Anderson-Thakur関数のFrobenius捻り並びにAnderson-Thakur級数に関する微分超越性の研究に取り組んだ. この二つはCarlitz-Gossガンマ値, 正標数多重ゼータ値それぞれの, Tate代数の元への持ち上げに現れることが知られている. 正標数の数論において微分の類似が複数与えられており, そのうちの一つにhyperderivativeがある. 先行研究にprolongationと呼ばれる, hyperderivativeによるtモチーフの拡張法 (Maurischat (2018))が与えられている. それを用いてAnderson-Thakur関数のFrobenius捻り, 並びにAnderson-Thakur級数両者のhyperderivativeの特殊化を周期にもつtモチーフを構成した. さらにtモチーフの完全列からt-motivic Galois群の次元を計算し, Papanikolas理論を用いることでそれら周期がなす体の超越次数を決定した. 最終的にAnderson-Thakur関数, Anderson-Thakur級数のhyperderivativeの特殊化が互いに代数的独立であることを明らかにした. この成果はChang-Papanikolas-Thakur-Yu (2010)による正標数ガンマ値と正標数ゼータ値の代数的独立性, Maurischat (2022)によるAnderson-Thakur関数の微分超越性を含むことも確認している. また, Anderson-Thakur関数をガンマ関数の正標数類似とみる観点(Pellarin (2013))から, この成果はヘルダー (1887)によるガンマ関数の微分超越性の正標数類似とみなせる. この結果に関して, 現在松月氏と論文を執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は名古屋大学の松月大知氏と共同研究に取り組み, Maurischatのprolongation, Papanikolas理論を用いてAnderson-Thakur関数, Anderson-Thakur級数に関する微分超越性を明らかにした. 当初の計画では予定していなかった研究であるが, この成果によりChang-Papanikolas-Thakur-Yuの一般化や, Drinfeld加群で, 周期が微分超越性を満たす例が与えられた. 今後の展開として, Thakurの幾何的ガンマ値やGossの二変数ガンマ値といった正標数ガンマ値の変種の場合の研究が考えられる. 以上より本区分とした.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画課題の残りである, Kochubeiポリログ値の代数的独立性に取り組む予定である. 松月大知氏との共同研究の過程でt-motivic Galois群及び, その応用であるPapanikolas理論について知見が得られた. これを参考に, Kochubeiポリログ値を周期に持つtモチーフについて, そのt-motivic Galois群の次元を調べる. 最近ではAnderson (1992)の結果を用いた, 周期の構成とそれらの線形・代数的独立性の証明についても興味があるため, 機会があればこちらにも取り組みたい.
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