2021 Fiscal Year Annual Research Report
レプトンにおけるCP対称性の破れの検証に向けたニュートリノ原子核反応の精密測定
Project/Area Number |
21J21789
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
在原 拓司 東京都立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ニュートリノ / J-PARC / T2K実験 / SuperFGD / 光検出器較正装置 / 導光板 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究者は長基線ニュートリノ振動実験であるT2K実験に所属している。T2K実験は主にニュートリノと反ニュートリノの性質が異なるか否か(CP対称性の破れ)を検証することが目的であり、現在はCP対称性の破れを信頼度90%で示唆する結果を得ている。更なる確度でのCP対称性の検証に向け、本研究者はT2K実験の前置検出器をアップグレードすることで、ニュートリノと原子核の反応を精密に測定し、それに付随する系統誤差の削減を目的としている。 前置検出器でのアップグレードでは新たにSuperFGDという立方体型のシンチレーターを約200万個積層した構造の検出器を導入する予定である。本検出器は既存の前置検出器で測定が困難な大角度に散乱する粒子や低運動量で飛跡の短い粒子の測定精度向上が見込まれている。 本研究者はSuperFGDの導入時の健全性確認および長期的運用時に本検出器を安定して稼働させるための光検出器較正装置の研究開発、量産および運用準備を進めている。本較正装置はSuperFGDの光検出器の増倍率の較正のためにLED光をすべての光検出器に分配することを目的とした装置であり、導光板を主体としたLED光を分配する光学部分とLEDを駆動させるための駆動装置に二分される。当該年度では光学部分の仕様決定と量産準備、量産を完了させた。加えて共同研究者とともにカメラを主体とした較正装置の光学部分の品質検査装置の研究開発を開始し、実現可能性の確認や基本的な仕様の決定を行った。また較正装置のための駆動装置の性能評価を進め必要な修正箇所と修正内容を整理した。さらに、光学部分と駆動装置の中間に位置し、接続に使用されるケーブルや中間基板、駆動装置とケーブルの接続に用いる変換基板の設計や量産を完了させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究者はCP対称性の破れの検証を目的とした長基線ニュートリノ振動実験であるT2K実験に所属している。現在、更なる確度でのCP対称性の破れの検証に向け、系統誤差削減のために前置検出器のアップグレードが進行中であり、本研究者は2022年度導入予定の新型前置検出器SuperFGDの研究に従事している。 当該年度ではSuperFGDの導入時の健全性確認や長期運用時に本検出器を安定して稼働させるために不可欠な光検出器較正装置の研究開発、量産および運用準備を進めた。本較正装置は2022年度に導入および運用予定である。光検出器較正装置はLED光を分配する光学部分とLED発光のための駆動部分に二分される。光学部分はLED、導光板、拡散版等から構成されるが、それらの詳細な仕様を決定し、量産および基本的な寸法等の品質確認を当初の計画通りに完了した。加えて量産した光学部分の光学特性の品質検査のために、カメラを主軸とした品質検査装置の開発に着手し、実現可能性の確認や基本的な仕様の決定を行い順調に進展している。さらに光学部分と駆動部分を接続する際のケーブルや接続のために必要となる変換基板、較正装置導入の際の利便性や安全性向上のための中間基板について仕様を決定し、生産まで順調に完了させた。駆動部分については共同研究者が開発した試作機の性能評価を行い、駆動装置の仕様の修正を行った。 上記のように当該年度では2022年度の較正装置導入に向け、様々な準備を順調に進展させた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的はT2K実験の前置検出器をアップグレードすることで、ニュートリノと原子核の反応を精密に測定し、それに付随する系統誤差を削減することである。今後は新型前置検出器SuperFGDの導入と安定的な長期運用に欠かすことのできない光検出器較正装置の導入および運用準備を完了させ、SuperFGDのシンチレーターキューブや光検出器、較正装置の組立と取り付けを行い、試運転で検出器の健全性を確認したのち、SuperFGDを導入し運用を開始する。さらにSuperFGDを実験予定場所に導入した後の試運転では、前述した較正装置を利用した健全性の確認や光検出器の較正に加えて、宇宙線ミューオン利用したシンチレータの光量や波長変換ファイバーにおける光量減衰等の基本的なパラメータの較正を行い、検出器を正しく動作させ問題なく物理データを取得可能な状態にする。 上記のSuperFGDの導入に関わる研究と並行してアップグレード後の前置検出器を対象とした検出器シミュレーションや解析ツールの検証及び開発に従事する。SuperFGDは荷電粒子の飛跡を3方向から射影として取得することができるが、そこから粒子の3次元的な飛跡とエネルギー損失を再構成する必要がある。現在のソフトウェアツールでは検出器で得られる光量やその広がり等のパラメータは実機で想定される理想的な値を使用しているが、それらの値が想定の範囲内で変化した場合においても正しく再構成されるか検証を行う。検証の結果、改善が必要となる場合は原因の特定および修正を行う。最終的にはSuperFGDで物理データ取得し、ニュートリノ原子核反応の測定により系統誤差の削減を目指す。
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Research Products
(1 results)