2023 Fiscal Year Annual Research Report
新しい外骨格硬化の仕組み:デュアルオキシダーゼ(Duox)による架橋形成
Project/Area Number |
22KJ2547
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
萩原 翠唯那 東京都立大学, 大学院理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 昆虫外骨格 / 硬化 / ポリマー化 / ナノインデンテーション / キイロショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫外骨格は、高い耐久性を有しており、これが昆虫の様々な環境への適応に大きく寄与している。外骨格硬化にはラッカーゼと呼ばれるマルチ銅オキシデースの関与が定説化されているが、予備実験のデータからデュアルオキシダーゼ(duox)と呼ばれる別の酸化酵素も、外骨格硬化に関与している可能性が考えられていた。そこで、本研究ではキイロショウジョウバエを用いて、duoxによる外骨格硬化のメカニズムを解明することを目的とした。Gal4/UAS強制発現システムを用いて、クチクラの一部である翅の細胞特異的にduox遺伝子の発現をノックダウンしたところ先行研究と同様に翅のクチクラの損壊が観察された。 Gal4/UAS強制発現システムを用いて、表皮細胞特異的にduox遺伝子をノックダウンしたところ、幼虫特有の外骨格構造であるマウスフック先端が破損する表現型が観察された。また翅特異的なノックダウンも翅クチクラの破損を示しており、これらの結果から、duoxの発現低下と組織の強度低下との間の相関が示唆された。 Duoxは細胞膜に局在し、細胞外における活性酸素種の産生を触媒する。Duoxによってつくられる活性酸素種はタンパク質表面のチロシン残基に作用し、その結果チロシン残基同士が共有結合的に架橋する構造であるジチロシンが形成されるが、これが外骨格成分のポリマー化に寄与していると考えられている。現在、Duoxが触媒する酸化反応の局在をライブで可視化する準備も進めている。また架橋される基質タンパクについても翅特異的にduoxをノックダウンした個体から得た翅を用いたSDS-PAGEにより架橋前と後で消失するバンドやノックダウンによるバンド消失の抑制が観察されており、これらの絞り込みも行っている。
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