2023 Fiscal Year Annual Research Report
リポカリン分子に着目した金属カドミウム慢性毒性発現機構の解明
Project/Area Number |
22KJ2576
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
山本 勝也 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | リポカリン / C8γ / カドミウム / 肝毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は前年度までに、雄性のC8γ欠損(KO)マウスがCdの急性曝露時に誘導される肝毒性に抵抗性を示し、これにはCdの投与前からKOマウスの肝臓で高い発現を示すメタロチオネイン(MT)が関与している可能性を見出した。また溶媒投与群KOマウスにおいて、肝臓中のCd蓄積量が野生型(WT)マウスと比較して有意に高かったことから、食餌中に含まれる微量のCdが、KOマウスでは肝臓により蓄積することでMT発現が誘導されている可能性が考えられた。そこで本年度は、この仮説を検証する目的で、Cd低減食を与えた雄性C8γ KOマウスについて、MTの発現解析およびCd肝毒性発現の評価を行った。前年度までの実験で使用していた通常飼料CE-2(0.07-0.08 ppmのCdを含有)の代わりに、精製飼料AIN-93Mを母体の妊娠前から生後8週齢まで与えてC8γ KOマウスを飼育した。8週齢時点でCdを6.4 mg Cd/kgの用量で腹腔内投与し、投与24時間後に解剖し解析を行った。その結果、溶媒投与群KOの肝臓におけるMTの発現量はWTと同程度であった。さらにCd投与群においては、Cdによる肝障害がWTと同様にKOでも認められた。この結果を反映して、血漿中のASTおよびALTは、Cd投与群で溶媒群と比較して大幅な上昇を示したものの、WTとKOの間に差は認められなかった。すなわち、AIN-93M飼料で飼育した雄性KOでは、通常飼料CE-2を与えて飼育した雄性KOと異なり、肝臓においてMTの発現誘導およびCd曝露による急性肝毒性の軽減が生じないことが示された。以上の結果から、C8γの欠損により食事由来の微量のCdが肝臓に蓄積し、そのCdが肝臓においてホルミシス効果を引き起こし、Cdに対する防御機構としてMTの発現を誘導する可能性が見出された。
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