2022 Fiscal Year Annual Research Report
画期的分子技術によるヘムの組織三次元イメージングとオミクス解析
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22J14986
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
垣内 亮 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 遊離ヘム / ヘムイメージング / 組織イメージング / 生体分子修飾化反応 / 蛍光標識 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では、ヘムによって活性化され生体分子を修飾化するフェニレンジアミン-N-オキシド(PDANO)構造を開発した。また、PDANO構造に蛍光色素を導入したMtAANoxを合成し、機能を評価した。 まず、モデルタンパク質(BSA)を用い、水溶液中での蛍光標識効率を評価した。水溶液中でMtAANoxをBSA存在下、へムと反応させ、蛍光ゲルイメージングを行った。その結果、BSA由来のバンドから蛍光シグナルが検出され、蛍光ラベル化が進行したことを確認した。次に、細胞内での蛍光標識効率を評価した。あらかじめ5-アミノレブリン酸(5-ALA)を投与してヘムの生合成を誘導した後に、MtAANoxを生細胞に添加し、未反応のプローブを洗浄後、蛍光イメージングを行った。その結果、ヘム生合成誘導群で強い蛍光シグナルが検出され、細胞内でも十分な蛍光標識効率を示した。 以上の結果をうけて、組織イメージング実験へと適応した。ここでは、イメージングによってヘムを検出した例がない脳を標的臓器とし、組織イメージングを実施した。マウスに5-ALAを経口投与してヘムの生合成を誘導した後、MtAANoxを脳室内投与し、脳の凍結切片を作成してイメージングを行った。その結果、コントロール群と比べて、5-ALA投与群で強い蛍光が検出された。現在、MtAANoxが染色されている神経細胞について調査中ではあるが、脳内のヘムを検出することに世界で初めて成功した。 以上の結果から、ヘムの生体内挙動解明のための有用な分析手法が不足している現状において、MtAANoxはヘムの生体内挙動・機能の解析に利用できる強力なツールとなることが期待できる。特に、MtAANoxはヘムの局所濃度に応じた蛍光標識が進行するため、脳などの生体組織でのヘムイメージングに適用でき、1細胞レベルでの遊離ヘム濃度分布の調査に活用することできる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究計画においては、ミトコンドリア、小胞体及び核集積性プローブについてそれぞれ設計・合成し、ミトコンドリアプローブにおいてはin vitroでの評価から組織イメージングの実験に至るまで、評価実験を一通り実施する予定であった。 まず、ミトコンドリアプローブにおいては、目的化合物であるMtAANoxを合成した。in vitro評価では、モデルタンパク質を用いて水溶液中でラベル化反応を行い、蛍光ゲルイメージングにて蛍光標識効率を評価した。その結果、期待通りヘム存在化で特異的にラベル化反応は進行することを明らかにした。また、細胞実験においても、ミトコンドリア内でMtAANoxがヘムの局所濃度に応じて十分な蛍光標識が進行することを確認した。以上の評価結果をもとに、マウス脳内のヘム生合成を検出するという計画にて共同研究として進めたin vivo試験では、アミノレブリン酸の経口投与、プローブの脳室内投与により、脳内で生合成されるヘムを蛍光検出できることが明らかになった。以上のように、化合物の合成からin vivo試験に至る評価実験までを実施することができた。 一方で、小胞体集積性プローブについても合成を達成し、in vitro実験、細胞実験での機能性評価を終えている。核集積性プローブについては、合成は未達成であるものの、合成ルートの検討及び反応中間体の合成を既に終えており、合成の目処が立っている。そのため、当該年度において、本研究は申請した研究計画の期待通りに研究が進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに、ミトコンドリア集積性ヘム選択的生体分子修飾化剤(MtAANox)の合成を行い、機能性を評価した。MtAANoxは、水溶液、細胞及び生体組織においてヘムの局所濃度に応じた生体分子修飾反応が進行し、蛍光シグナルが検出可能であることがわかった。上記の結果を受け、本年度は以下の通り、研究を実施する予定である。 1. MtAANoxの組織イメージング:これまでの実験で、ヘム合成誘導剤(5-アミノレブリン酸)を処理したマウスに、MtAANoxを脳内に投与し、マウス臓器を摘出・切片培養後、組織イメージングを行い、ヘム合成誘導剤により刺激した場合のヘムの濃度・局在変化を可視化することに成功した。本年度の実験では、脳組織におけるヘム(合成活性)の局在の詳細を明らかにする。具体的には、固定した組織切片に抗体を用いた免疫染色を用い、ヘムの合成が活発となっている細胞群の種類を特定する。これまでの条件検討の結果から、ヘムの合成が活発となっている細胞群が1種類の抗体では染色できない(様々な細胞で染色されている)ことがわかっており、引き続き免疫染色を実施する予定である。 2. 反応機構の解析:ヘム選択的生体分子修飾化剤は、ヘム選択的修飾化能を持つフェニレンジアミン-N-オキシド構造を母骨格としており、活性種として鉄-オキソ種が反応中間体として生成する機構が予想されていた。しかし、実際には予想とは異なる反応機構でラジカル反応が進行している可能性があり、本年度の実験では、その詳細を明らかにすべく、吸光度測定や電子スピン共鳴測定を行い、反応機構の詳細を調査する予定である。 3. その他の小器官集積性プローブ:小胞体集積性プローブについては、MtAANoxの実験の目処が立ち次第、組織イメージング実験の検討を行う。核集積性プローブについては、早急に合成し、in vitro及び細胞での評価を行う。
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Research Products
(3 results)