2022 Fiscal Year Annual Research Report
ALS病態に対するFGFR1を標的とした新規治療戦略確立のための基盤研究
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22J15300
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
伊藤 泰生 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ALS / FGFR1 / SOD1 / C9orf72 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、筋萎縮性側索硬化症(ALS)病態における線維芽細胞成長因子受容体1(FGFR1)の細胞種(運動神経、ミクログリア、アストロサイト)ごとの機能を明確にし、神経保護効果のみを誘導する方法を確立する。最終的には、その成果を利用したFGFR1によるALSの新たな治療戦略の基盤を提供することを目的とする。 まず、ALSにおけるFGFR1の発現を調べるために、マウス運動神経様細胞NSC34にALSの原因遺伝子として知られるSOD1、TDP43の変異体およびC9orf72由来ALS患者で凝集するジペプチドリピートタンパク質(DPR)を導入し、qRT-PCRを行った。結果、変異SOD1、DPRを導入した細胞では、FGFR1の発現量に変化はなく、変異TDP43導入細胞では、FGFR1のmRNA発現量の減少が確認できた。 次に、FGFRのリガンドであるFGF2による神経保護効果に関して検討した。FGF2の処置は、変異SOD1及びDPR導入NSC34細胞における細胞生存率の低下を回復させることを確認した。また、FGF2処置によるNSC34の突起伸長の検討を行い、FGF2処置による突起の伸長を確認した。 さらに、ミクログリアにおけるFGFR1の役割を調べるために、マウスミクログリア細胞株BV2を用いた。FGFR1の活性化は、グルタミン酸受容体であるGlastの発現を増加させることが知られている。また、FGFR1の活性化が、ミクログリアによる炎症の誘発を抑制することも知られている。qRT-PCRにより、FGF2処置をしたBV2細胞のGlastおよび炎症性サイトカインのmRNA発現量を調べたところ、GlastのmRNA量の増加とIL-1βやiNOSなどの減少が確認できた。 今後、FGFR1選択的なリガンドを用いた検討および共培養系を用いて、FGFR1活性化による複合的な影響について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、pColdベクターを用いて大腸菌におけるタンパク質発現系を構築し、FGFR1に特異的に作用するFGF2の変異体(FGF2-Δ26)の作成を行い、FGF2-Δ26によるFGFR1の選択的な活性化による細胞種ごとの影響も確認する予定だった。しかし、FGF2-Δ26の作成に時間がかかり、昨年度中の検討は行えなかった。2023年度に入ってから、FGF2-Δ26の作成が完了したため、今後検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、pColdベクターを用いて大腸菌におけるタンパク質発現系を構築し、FGFR1に特異的に作用するFGF2の変異体(FGF2-Δ26)の作成を行っている。今後、生成したFGF2-Δ26を用いて、運動神経、ミクログリア、アストロサイトにおけるFGFR1の特異的な活性化による作用に関して検討を行う予定である。 具体的には、運動神経において、昨年度、FGFRのリガンドであるFGF2を用いて行ったALSモデル細胞における細胞生存率及び突起伸長といった神経保護効果に関する検討を行う(MTTアッセイ、免疫染色法など)。また、ミクログリアに関しては、FGF2-Δ26処置によるグルタミン酸受容体発現の変化によるグルタミン酸クリアランスに関する検討や炎症性サイトカインに関する検討を行う(グルタミン酸測定キット、ウエスタンブロット法、qRT-PCR法など)。さらに、アストロサイトにおけるFGFR1の機能を解明するうえで、抗アポトーシス作用を示すNrf2やアストロサイトから分泌されるNGFに関する検討およびグルタミン酸受容体の変化に関する検討も行う(ウエスタンブロット法、qRT-PCR法など)。 また、ALS病態におけるFGFR1の機能の解明には、共培養系での検討は不可欠である。そこで、マウス初代培養細胞での共培養系の確立を行う。まず、運動神経とアストロサイトまたはミクログリアとの共培養系を用いて、その後、運動神経とアストロサイト・ミクログリアの三次元培養で検討を行う。これらの共培養系を用いて、FGF2-Δ26を処置し、単培養系で検討した神経保護効果やグリア細胞で確認される種々の作用に関して検討を行う。これらの検討により、FGFR1活性化による複合的な影響について明らかにする。
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Research Products
(1 results)