2021 Fiscal Year Annual Research Report
タウタンパク質のリン酸化におけるATBF1機能解析
Project/Area Number |
21J23479
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
周 春雨 名古屋市立大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 糖尿病 / ATBF1 / タウタンパク質のリン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病はアルツハイマー病(AD)の危険因子であり、特に脳内のインスリン欠乏はタウタンパク質をリン酸化させ、認知機能障害を引き起こす。我々は、ADモデルマウスにストレプトゾトシン(STZ)を投与し、1型糖尿病を誘発させ、マウス脳内で変動する分子を網羅的に解析した結果、転写因子であるATBF1の発現レベルが減少していることを見出した。本研究の目的は、①インスリン欠乏によるATBF1発現減少のメカニズムと、②タウタンパク質のリン酸化におけるATBF1の機能を明らかにすることである。昨年度までに、ATBF1発現はインスリンシグナルによって制御されることや、細胞にATBF1をノックダウンするとタウタンパク質のリン酸化が亢進し、ATBF1を過剰発現するとタウタンパク質のリン酸化が抑制されることを明らかにした。 本年度は、ATBF1によるタウタンパク質のリン酸化制御メカニズムを解明するため、ラット由来の初代神経培養細胞およびN2a-P301L細胞にATBF1をノックダウンまたは過剰発現し、タウタンパク質のリン酸化に関わる酵素(GSK3β、JNK、ERK、P38など)およびタウタンパク質の脱リン酸化に関わる酵素(PP1、PP2Aなど)の発現変動を検討した。その結果、ATBF1をノックダウンした細胞で、JNKおよびERKのリン酸化レベルが増加した。一方、ATBF1を過剰発現した細胞で、これらのリン酸化レベルが減少した。また、野生型マウスおよびATBF1ヘテロマウスの脳サンプルを用いて、これらタンパク質のリン酸化レベルや発現レベルを比較した結果、ATBF1ヘテロマウス脳内のタウタンパク質のリン酸化、およびJNK、ERKの活性化が亢進していることを見出した。以上の結果より、ATBF1によるタウタンパク質リン酸化の制御はJNK、ERKを介する可能性が推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、1)in vitro実験でATBF1によるタウタンパク質のリン酸化制御メカニズムの解明と、2)ATBF1ヘテロマウスとAPP-KIマウスの交配マウスを作製することであった。 1)in vitro実験でATBF1によるタウタンパク質のリン酸化制御メカニズムの解明:この実験は計画通りに行った。ラット由来の初代神経培養細胞およびN2a-P301L細胞にATBF1をノックダウンすると、タウタンパク質のリン酸化に関わる酵素であるJNKおよびERKの活性化が亢進した。一方、N2a-P301L細胞にATBF1を過剰発現すると、JNKおよびERKの活性化が低下した。これらの結果より、ATBF1は、JNKおよびERKの活性化を介してタウタンパク質のリン酸化を制御することが示唆された。 2)ATBF1ヘテロマウスとAPP-KIマウスの交配マウスの作製: ATBF1ヘテロマウスは生まれてから3ヶ月齢で死亡することが多いため、サンプル数が十分に得られなかった。しかし、胎生18日目のATBF1ヘテロマウスの脳を解析したところ、野生型に比べてATBF1ヘテロマウス脳ではタウタンパク質のリン酸化の亢進や、JNKおよびERKの活性化の亢進が見られた。この結果より、in vitro実験結果と同様に、in vivoにおいてもATBF1発現の減少はJNKおよびERKの活性化を介してタウタンパク質のリン酸化を促進することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)インスリン欠乏型ATBF1ヘテロマウスの作製と解析:野生型マウスおよびATBF1ヘテロマウスにSTZを投与し、インスリン欠乏型マウスを作製する。これらのマウスを用いて、①血糖値、②血漿インスリンレベル、③タウタンパク質のリン酸化レベル、④タウタンパク質のリン酸化および脱リン酸化に関わる酵素の発現変動を検討する。 2)ATBF1ヘテロマウスとAPP-KIマウスの交配マウスの作製と解析:ATBF1ヘテロマウスとAPP-KIマウスを交配したマウスにSTZを投与し、4ヶ月後に、①血糖値、②血漿インスリンレベル、③認知機能テスト、④タウタンパク質のリン酸化レベル、⑤細胞死やシナプス関連タンパク質の発現変動を解析する。
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