2022 Fiscal Year Annual Research Report
腸GLP-1のインスリン感受性亢進作用を制御する中枢・自律神経システムの解明
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22J20706
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
大林 健人 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | GLP-1 / インスリン / インスリン作用増強 / インスリン感受性 / 求心性迷走神経 / 視床下部 / 交感神経 / DREADD法 |
Outline of Annual Research Achievements |
希少糖アルロースを用いた腸ホルモンGLP-1(glucagon-like peptide-1)の分泌促進が求心性迷走神経を介してインスリン感受性を増強して、耐糖能を向上させる、これまでに報告のない新しい機序で糖代謝を調節することを当研究室は見出してきた。そして、この作用は血中インスリン濃度依存的な作用であった。本研究は、腸GLP-1のインスリン作用増強効果における作用機序(入力機構、中枢機構、出力機構)の解明を目指す。当該年度は下記内容を実施した。 1)入力機構:GLP-1分泌促進成分のアルロースとインスリン分泌促進成分のSU薬を健常マウスへ同時に投与すると、単独投与と比較して、相加的に求心性迷走神経に発現する活性化マーカー(pERK1/2)の発現量が増加した。SU剤による血糖降下作用は、アルロースを前投与することで増強し、この作用はGLP-1受容体欠損と迷走神経求心路遮断で消失した。 2)中枢機構:アルロース投与によって視床下部神経Xを活性化することを見出した。神経Xを化学遺伝学的手法(DREADD法)を用いて人為的に神経活動を抑制すると、アルロースの腸GLP-1と求心性迷走神経を介したインスリン作用増強効果が消失した。従って、腸GLP-1のインスリン作用増強効果には視床下部神経Xの関与が必須であることが示された。 3)出力機構:脳と末梢代謝臓器を繋ぐ交感神経遠心路に着目した。アルロースによる各末梢臓器の交感神経活動の変化をノルアドレナリン代謝回転法にて評価した。しかし、アルロースの投与によって代謝臓器のノルアドレナリン代謝回転は有意に変化しなかった。現在、インスリンの標的末梢臓器である肝臓、骨格筋に着目し、ウエスタンブロッティングによるインスリン受容体シグナリングの強度変化解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、腸GLP-1のインスリン感受性亢進を制御する中枢・自律神経システムにおける1)入力機構、2)中枢機構、3)出力機構の解明を目指している。当該年度は、1)入力機構:GLP-1とインスリンの同時刺激により求心性迷走神経活性化が増強し、インスリンによる血糖降下作用も増強することを示した。②中枢機構:本作用に視床下部神経Xの関与が必須である事を示した。③出力機構:代謝臓器を支配する交感神経活動をノルアドレナリン代謝回転で評価した。結果は、ノルアドレナリン代謝回転法では交感神経活動が亢進している臓器を同定することができなかった。他方、別の手法を用いて、本作用に関与する代謝臓器を示唆する予備的結果を得た。この予備的結果を元に次年度計画に繋げる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)入力機構:内因性GLP-1による求心性迷走神経活性化に、求心性迷走神経に発現するインスリン受容体関連分子が必須であることを証明するために、求心性迷走神経特異的インスリン受容体シグナル障害マウス(Phox2b cre; IRS2 floxed)を作出する。このマウスを用いて、腸GLP-1のインスリン作用増強効果を検証する。 2)中枢機構:X神経は二つの神経核に存在する。これまでは神経核Aに発現する神経Xの関与を検証した。神経核Bの神経Xの関与も、DREADD法を用いて検証する。さらに、神経Xが投射する脳領域とその機能の解析のための準備を進め、3年目の実験に備える。 3)出力機構:ウエスタンブロッティング法を確立し、末梢代謝臓器のインスリン受容体シグナル伝達分子のリン酸化を解析する。この技術を用いて、脳から末梢代謝臓器への出力経路に関与する自律神経と責任代謝臓器の同定を試みる。
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