2022 Fiscal Year Annual Research Report
黒雲母からの持続的カリウム供給を可能にする最適風化条件の解明
Project/Area Number |
22J21644
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
黒川 耕平 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 黒雲母 / カリウム / 非交換態カリウム / 土壌 / 風化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界に遍在する資源であり近年価格高騰が問題となっているカリウム (K) の国内資源の確保に向けて、K含有鉱物である黒雲母に富む資材に着目し、黒雲母から植物へのK供給が高水準で持続される条件を確立することを目的とするものである。 本年度である2022年は、高水準のK供給能力を有する黒雲母に富む資材の探索およびK供給能力の規定要因の解明を行った。本研究では、黒雲母に富む資材を新たに採掘するのではなく、工業的に黒雲母に富む原料から製品を生成する際に処理される3種類の廃棄物 (廃材A, 廃材B, 廃材C)、および花崗閃緑岩サプロライト (サプロライト) に着目し、資材の鉱物組成やK供給能力、K供給能力を規定する因子を分析した。その結果、資材から磁気分離や湿式化学処理等によって単離した黒雲母が資材に占める割合は、廃材Aで42%、廃材Bで14%、廃材Cで53%、サプロライトで18%であった。化学抽出 (熱硝酸抽出法) によって資材中の黒雲母構造内のKのうち植物が利用可能なK量 (非交換態K量) を評価した結果、廃材Cの非交換態K量は8.3 g/kgであり、他の資材 (平均1.6 g /kg) よりも高かった。さらに黒雲母構造内のKに占める非交換態K量の割合、つまり黒雲母構造からのKの放出のしやすさは、廃材Cで37%であり他の資材 (平均12%) よりも高かったことから、廃材Cは高水準のK供給能力を有する資材であることが明らかとなった。 黒雲母構造からのK放出のしやすさの規定要因として資材の粒径や黒雲母の元素組成を分析した結果、粒径が小さいほどK供給能力が高いことが示された一方で、粒径の小ささよりも黒雲母自体が廃材Cのようなマグネシウム (Mg) に富む種類であることが、高水準のK供給能力に富む資材を見分ける指標としてより重要であることが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カリウム (K) の国内資源の確保を志向し、化学肥料ではなく、鉱物資源として黒雲母に着目するという方向性は踏襲しつつ、農業ではない産業 (鉱業) に着目し、黒雲母に富む鉱物資源からのK放出能について示したとともにその規定要因を解明した。さらに、当初の研究計画にはなかったが、化学分析的手法だけでなく、計算科学的手法を用いた鉱物モデルの最安定構造の計算 (第一原理計算) について学び、黒雲母の詳細な構造解析技術を習得した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度には、黒雲母自体が廃材Cのようなマグネシウム (Mg) に富む種類であることが、高水準のK供給能力に富む資材を見分ける指標として重要であることが示された。ただし、Mg以外の因子も黒雲母からのK供給能力に影響することが考えられるので、異なる産地の黒雲母の元素組成や詳細構造の解析を行い、K放出能力が高い黒雲母の生成条件・環境を解明する。
|
Research Products
(2 results)