2023 Fiscal Year Research-status Report
黒雲母からの持続的カリウム供給を可能にする最適風化条件の解明
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22KJ2598
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
黒川 耕平 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 黒雲母 / カリウム / 非交換態カリウム / 粉末X線回折法 / 土壌 / 鉱物 / 雲母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、世界に遍在する資源であり近年価格高騰が問題となっていることから、喫緊の課題になっている「カリウム (K) の国内資源の確保」に対する解決策として、K含有鉱物である雲母に着目し、雲母から植物へのK供給が高水準で持続される条件を解明することを目的とするものである。 本年度である2023年は、高水準のK供給能力を有する土壌条件の解明のために、土壌中の雲母を定量的に分析する手法を確立し、土壌がKを供給する能力との関係を明らかにした。分析手法として、一定波長のX線を試料に入射し、鉱物固有の格子面間隔に応じたX線回折パターンを得ることで試料の鉱物組成の全体像を把握することができる、粉末X線回折法に着目した。土壌への含有が想定される50種類の参照鉱物を独自で準備し、実験的に得た参照鉱物の回折パターンを用いて、日本全国の農耕地79地点の土壌試料のフィッティング解析をすることで土壌鉱物を定量した。粉末X線回折法で得た土壌鉱物量を、湿式分解などによって鉱物を個別に定量する手法で得た値と比較した結果、土壌中の主要な鉱物を相対誤差2-5%で定量でき、特に雲母は相対誤差2%の定量精度を達成した。 粉末X線回折法によって得た土壌中の雲母量と、化学抽出 (熱硝酸抽出法) によって得た土壌中のKのうち植物が利用可能なK量 (非交換態K量) との関係を解析した結果、0.1%有意な正の相関関係が認められたことから、土壌中の雲母量が非交換態K量の規定要因であることが明らかになった。さらに、花崗岩を母材とする土壌では、K供給能力が高い三八面体型雲母である黒雲母に富むため、雲母当たりのK供給能力が高いことも定量的に示すことができた。 以上より、粉末X線回折法を用いて土壌中の雲母の量と種類を定量することで、高水準のK供給を有する土壌条件を見分けることができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カリウム (K) の国内資源の確保を志向し、化学肥料ではなく、鉱物資源として雲母に着目するという方向性は踏襲しつつ、K供給源として土壌中の雲母に着目し、特に黒雲母に富む土壌はK供給能力が高いことを定量的に示した。さらに、当初の研究計画にはなかったが、粉末X線回折法を用いて土壌中の鉱物の一斉定量法を確立し、鉱物種ごとの個別定量法である湿式分解法で得た定量値と比較することで、粉末X線回折法の高い定量精度を示した。このように粉末X線回折法による土壌鉱物の定量精度を示した事例は初めてであり、定量法が確立できたことにより、土壌鉱物と土壌のK供給能との関係を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度には、粉末X線回折法を用いて日本の農耕地土壌の鉱物定量を行い、その定量精度を示した。2024年度には、多様な環境下で生成したアジア諸国の土壌の鉱物組成を定量し土壌のK供給能力との関係を明らかにするとともに、粉末X線回折法による土壌鉱物の定量精度向上を目指す。さらに、2023年度に実施した黒雲母を用いた植物栽培試験の試料の分析を進め、高水準のカリウム供給能力に富む黒雲母の条件を解明する。
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Causes of Carryover |
2023年度は、土壌中の鉱物を高精度に定量するために、粉末X線回折法によって得られた標準試料の回折パターンのフィッティング解析に時間を費やした。標準試料は所属している研究室で所有しているものを一部利用できたため、想定よりも経費を使用しなかった。ただし、さらなる定量精度向上には、標準試料の拡充が不可欠であり、そこに経費を使用する予定である。
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