2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J00299
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
榎本 悠久 大阪府立大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | アーベル圏 / 多元環 / 表現論 / 部分圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アーベル圏の種々の部分圏のなす半順序集合についての研究を主に行った。ねじれ類(拡大・商で閉じた部分圏)、wide部分圏(拡大・核・余核で閉じた部分圏)、ICE閉部分圏(像・余核・拡大で閉じた部分圏)の3つが主な考察対象である。これら部分圏全体の集合は包含により完備束となる。このうちねじれ類のなす束は先行研究が多く、よい多元環の加群圏については具体的な計算アルゴリズムも与えられている。これについて、ねじれ類のなす束を用いて他の2つの部分圏のなす束を純組合せ論的に計算できることを示した。 またwide部分圏のなす束についてより詳しく調べた。具体的には、Marks-Stovicekによりwide部分圏のなす束からねじれ類のなす束への単射が存在するが、まずこの像が、ねじれ類のなす束のなかで標準結び表示をもつ元に他ならないことを観察した。これを念頭におき、一般の完備半分配束に対して、標準結び表示を持つ元全体の集合に新たなkappa orderと呼ばれる順序を定義し、これをねじれ類のなす束の場合に適応するとwide部分圏のなす束が復元されることを示した。 これらの応用として、コンピュータ上でねじれ類のなす束を与えるとICE閉部分圏やwide部分圏のなす束を計算するプログラムを開発し、いくつかwide部分圏の束についての予想を得た。またDynkin型道多元環や前射影的多元環の場合にねじれ類とwide部分圏についての研究を適応することで、「Dynkin型Cambrian束のkappa orderをとるとDynkin型non-crossing partitionのなす束が出てくる」「有限Coxeter群のweak orderのなす束のkappa orderをとるとshard intersection orderが出てくる」という純組合せ論的な事実を新たに発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はICE閉部分圏の分類を研究課題の1つとしていたが、これについては名古屋大学の酒井氏との共同研究ですでに「ICE閉部分圏はwide部分圏のねじれ類に他ならない」ということが判明した。よって具体的にICE閉部分圏のなす束を計算することを課題としたが、これについて研究実績で述べたように、ねじれ類のなす束からICE閉部分圏のなす束を計算するアルゴリズムが判明した。これはLie型組合せ論への応用もあることから、重要な進展である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、主に加群圏のIE閉部分圏や、ET圏のSerre部分圏についての研究を行う。まずはホモロジー代数的に単純であるhereditaryな多元環の場合についてのIE閉部分圏を、射影対象・入射対象といった不変量で分類することを試みる。またSerre部分圏については、加群圏の場合には単純加群を用いて分類できるが、一方一般の完全圏では単純対象についてJordan-Holderの定理が成り立たないといった困難がある。一方で完全圏の単純対象はGrothendieckモノイドという不変量でうまく記述できることが知られているため、完全圏やET圏に対してGrothendieckモノイドを用いてSerre部分圏が分類できるのではないかと期待されるため、それを試みる。 さらにこれら部分圏を分類する上で、有限表現型の多元環の加群圏の部分圏を統一的に扱うことの出来るソフトウェアの開発を目指す。
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Research Products
(12 results)