2022 Fiscal Year Annual Research Report
エクソソーム網羅的構造解析マイクロ・ナノデバイスによるガン転移機構解明
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22J14065
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
藤原 聡子 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | エクソソーム / マイクロ・ナノデバイス / 粒子径分級 / 膜・内包物解析 / 捕集 / 電気二重層 / 表面増強ラマン散乱 / 誘電泳動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は次の3項目を実施した。 1)所属研究室で既に知見のある、ナノ空間内電気二重層厚さに基づく粒子径分級法を、シースフローとナノ流路数を増設した新規石英製デバイスに適用し、粒子径分級能と(旧デバイスで課題であった)分級効率について検討した。まず、蛍光標識ナノ粒子を用いて粒子径分級したところ、約50 nm単位での分級が可能だと明らかになった。これは旧デバイスの分級能と同等であった。またシースフローを使用せずとも、旧デバイスと比べて単位時間当たり 2 倍以上の分級効率向上が示唆された。 2)金ナノコーンアレイ(Au NCA)を利用した表面増強ラマン散乱センサ開発・性能評価を行った。まず、開発したAu NCAセンサの励起波長依存性・定量性・ラマン増強度について、レーザーラマン顕微鏡で評価した。結果、532 nmに比べて785 nm励起ではラマン信号が約60倍大きいことが分かった。これは各励起波長におけるAu NCAの光学特性から説明できることが分かった。また開発した本センサは、定量性やラマン増強度は類似構造をもつ既報センサと同程度だった。しかし、簡便な作製手順で既報よりも極めて高い再現性(<6%)をもつセンサの開発に成功した。 3)誘電泳動法(DEP)を用いたプラズモニック結晶上への生体分子捕集評価を行った。まず、プラズモニック結晶である金ナノホールアレイ(Au NHA)に対向電極のITO電極を組み合わせたデバイスを作製した。そのデバイスを用いて、基礎検討として、Au NHA上への蛍光標識ナノ粒子捕集を試みた。結果、DEPによる金ナノホール近傍への蛍光標識ナノ粒子集積を蛍光画像およびAu NHAの光学特性変化から確認できた。さらに、極めて小さなタンパク質であるウシ血清アルブミンの非標識かつ迅速な捕集にも成功した。これら結果から、エクソソーム捕集へ応用展開できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、感染症による研究活動制限は緩和された。しかし、昨年度の感染症対策のため、大幅な研究活動制限を余儀なくされた。その昨年度内での遅延が、本年度まで波及していた。また、研究遂行に必要な学内共通機器の修理が想定以上に時間を要したため、研究計画を変更せざる得なかった。以上の理由から、当初の計画よりもやや遅れている、と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、各3項目の実験で次の様な検討を予定している。 1)シースフローとナノ流路数を増設した新規石英製デバイスで、シースフローの有無による分級効率変化の検討を進める。そして、実際にエクソソームの粒子径分級を試みる。最後に、これまでの結果を踏まえて、更なるスループット向上のため、シミュレーションを交えたデバイス構造の検討も行う。 2)3)の実験結果を踏まえて、本年度は3)との融合を考えている。誘電泳動(DEP)によるプラズモニック結晶上へのエクソソーム捕集後、ラマン信号取得に挑戦する。その詳細な経緯は3)に記す。 3)昨年度、開発した金ナノコーンアレイ(Au NCA)を用いたエクソソームラマン信号の取得を試みたが、信号は得られなかった。これは、Au NCA構造に起因する、ラマン信号増幅能の低さが原因だと考えられる。そのため、本年度は、2)と融合させることを考えている。その理由は2つある。1つ目は、DEPによって、溶液中のエクソソームをAu NCA上へ集積させることで、Au NCA近傍に存在するエクソソーム量が増加するからである。既に、静電場シミュレーションでは、Au NCA近傍に強い不均一電場の形成を確認しているため、実現可能性は高いと考えている。2つ目は、エクソソーム集積後、金ナノ粒子も同様にDEPを用いてAu NCA上へ集積させることで、増強電場領域の増加/拡充、およびラマン信号増強度の向上が見込まれるからである。しかし、学内共通機器では、DEP操作しながらのラマン信号取得はできないため、自作ラマン光学系を組み立てる予定である。ラマン光学系構築後は、金ナノ粒子添加量の条件の最適化を踏まえた上で、各細胞種のエクソソームを1)で粒子径分級後、ラマン信号取得を行い、エクソソームの網羅的構造解析、ガン転移機構の解明を目指す。
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