2022 Fiscal Year Annual Research Report
X線・TeVガンマ線残光の同時説明によるガンマ線バーストのジェット構造の解明
Project/Area Number |
22J20105
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
佐藤 優理 青山学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ガンマ線バースト / TeV ガンマ線 / 相対論的ジェット |
Outline of Annual Research Achievements |
ガンマ線バースト(GRB)の残光とは、数日から数年にわたり、電波からガンマ線までの多波長の電磁波が観測される現象である。残光の標準モデルは、中心エンジンから放出された相対論的(ローレンツ因子は 100 以上)なジェットが放出され、周辺媒質との衝突により生じる衝撃波で加速された電子からのシンクロトロン放射と考えられている。残光の標準モデルでは、ジェットの先端の物理量は一様であると仮定されている(以下、「一様モデル」)。 近年になってから、チェレンコフ望遠鏡 MAGIC, H.E.S.S., LHAASO等によって、GRBからの超高エネルギーガンマ線(TeV ガンマ線) 放射が伴うイベントが5つ(GRB 180720B, 190114C, 190829A, 201216C, 221009A)報告された。しかし、TeV ガンマ線残光放射は、シンクロトロン放射では説明が難しく、高エネルギー電子が低エネルギーの光子を叩き上げる逆コンプトン散乱が有力視されているが、 その放射機構は未解明である。 本年度では、ジェットのローレンツ因子と開き角が異なる2つの一様モデルの重ね合わせである二成分ジェットモデルを用いて、TeV ガンマ線放射を伴うイベントの観測結果を説明可能か調べた。その結果、これまでに報告されたすべてのイベントの多波長残光を説明可能であることを示した。TeV ガンマ線放射については、高エネルギー電子の放つシンクロトロン光子を同位置・同種の電子が逆コンプトン散乱を行う過程のシンクロトロン自己コンプトンのみで、説明可能であることを明らかにした。さらに、TeV ガンマ線放射のためには、ローレンツ因子が小さいジェットの存在が重要であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一様モデルでは、TeV ガンマ線を含む多波長残光の観測結果の説明が困難であることを指摘し、二成分ジェットモデルを提唱し、欧州の学術誌である「Journal of High Energy Astrophysics」と、英国の学術誌の「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society Letters」に2本の査読付き原著論文を発表することができた。 次年度の研究に向けて、流体シミュレーションのテスト計算を行い、これも計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
TeV ガンマ線放射について、二成分ジェットモデルでは、シンクロトロン自己コンプトンの他に、ある放射領域に存在する電子が異なる放射領域から出た光子に逆コンプトン散乱を行う過程である外部コンプトンも考える必要がある。今後は、外部コンプトン散乱の計算コードを完成させ、シンクロトロン自己コンプトンと外部コンプトンのどちらがどのような場合に卓越するのか明らかにする。 さらに、星間媒質を伝播中に2つのジェットが流体力学的に相互作用することにより、残光放射にどのような影響を与えるのか、流体シミュレーションを用いて検証する。
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