2023 Fiscal Year Annual Research Report
パレストリーナ様式の対位法教程に関する解全列挙プログラムと学習支援システムの開発
Project/Area Number |
22KJ2654
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kunitachi College of Music |
Principal Investigator |
土屋 憲靖 国立音楽大学, 音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 対位法 / 音楽理論 / 組合せ計算 / 学習支援 / 音楽美学 / 零抑制二分決定図 / ZDD / パレストリーナ様式 |
Outline of Annual Research Achievements |
パレストリーナ様式の二声対位法の全音符と二分音符の課題について、許容解および良好解の全列挙ならびに最良解の算出に成功した。ここでは、許容解とは対位法規則における誤りを含まない解、良好解とは含まれる音楽要素に対する加点減点により算出された点数が一定以上である解、最良解とはその点数が全解の中で最高である解とする。課題の入力から解の全列挙と良好順30件の算出までを合わせて1分足らずの短い時間で終える事ができる。点数設定については、対位法教程で美的観点から具体的に言及される概ね全ての各音楽要素に対して加点と減点を任意に設定でき、その点数の順で列挙できる。設定次第で異なる結果が得られる設計は、複数の美的観点がある実際の音楽美学と一致している。美的に優れた音楽の探索という実用的技術を一定の範囲で実現できたと言える。 本研究の技術は、譜面情報を点と辺による図として表し、零抑制二分決定図による図列挙計算法を適用することで実現している。各音楽要素に対応する部分図や部分集合を全探索し、非部分集合演算のような零抑制二分決定図が得意とする組合せ集合演算を用いて譜を除外したり印付けしたりすることで、全ての可能性を効率的に探索する。 細かい音価を含む複雑な課題や三声以上の課題については、その複雑さから計算量が膨大となるため解の全列挙までは至らなかったが、それでも一定の対位法規則に則る譜面の全列挙までは実現した。 学習支援システムについては、対位法経験者の協力を得た試用実験により既に一定の有効性を実証できている。あくまでも学習の支援となる補助的なものに留まるが、類似の解を検索する機能には教師が添削時に別解を示す指導と似た効果が期待できるといった利点がある。本システムは2024年4月よりhttps://一音一.世界/k で試験運用している。
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