2020 Fiscal Year Annual Research Report
脳オルガノイドを用いた細胞間相互作用解析によるレット症候群の病態解明
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20J40121
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
野田(安藤) 友子 慶應義塾大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 脳オルガノイド / ヒトiPS細胞 / レット症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、レット症候群患者由来iPS細胞を用いて、脳の3次元構築を模した脳オルガノイドを介した神経細胞・アストロサイト・ミクログリアなどの細胞間相互作用の影響を解明することを目的としている。まず、これまで培養維持に利用していたiPS細胞培養系からフィーダー細胞であるマウス線維芽細胞を除去し、フィーダーフリー化細胞株へと転換し、安定的に維持培養が可能となった。これにより、脳オルガノイド中のマウス細胞の混入を防ぐことが可能となり、1細胞RNA-seq解析等のオミクス解析におけるマウスゲノム配列混入を無視し、患者由来の細胞のみで比較検討することが可能となった。 次に、フィーダーフリーiPS細胞からの脳オルガノイド作製方法を最適化するために健常対照群iPS細胞(201B7細胞)を用いた検討を実施した。既存の手法はフィーダー細胞で培養したiPS細胞からオルガノイドを形成するものであり、フィーダーフリー化したiPS細胞においては当該手法を用いると脳オルガノイドの形成は困難であった。そこで細胞培養時の細胞外基質やiPS細胞のはく離方法の検討の結果、フィーダーフリー化したiPS細胞からも脳オルガノイドを安定的に作製可能な胚様体を形成することが可能となった。さらに、誘導した脳オルガノイドに対し組織学的解析を実施した結果、神経系細胞マーカーであるTUJ1、神経系前駆細胞マーカーであるSOX2および神経細胞の層マーカーであるCTIP2が1つのオルガノイド内で構成され、神経発生の初期段階をモデル化できたと言える。 続いて、レット症候群患者由来iPS細胞でも同様のEB形成および脳オルガノイド形成に着手した。レット症候群患者由来iPS細胞からも、EB形成および脳オルガノイドへの誘導ができることを確認した。現時点では継続培養中であり、詳細な解析については次年度以降に実施するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度はCOVID-19の感染拡大による緊急事態宣言下で研究を開始することになり、受け入れ研究機関における緊急事態宣言下での研究体制に従い、第一四半期においては在宅でのデータ整理や論文探索と研究室における研究活動を併用せざるを得ない状況であった。本研究課題はiPS細胞由来脳オルガノイドを用いた解析が中心であるため、長期間の継続した培養継続が必須である。第一四半期において得られた知見をもとに、それ以降の細胞培養を含めた研究再開後には、安定的な培養法確立に向け脳オルガノイド形成初期の条件検討を十分に実施することで、制限された研究活動の中で脳オルガノイドの培養系を改変し、レット症候群の病態解明をするための基盤を構築することができた。フィーダーフリー化したiPS細胞の樹立及びオルガノイドへの分化誘導の改変により、高品質な脳オルガノイドを形成する手法が確立され、研究の根幹技術として十分期待できるものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では、健常対照群iPS細胞(201B7細胞)を用いてフィーダーフリー化されたiPS細胞より、脳オルガノイドを安定的に作成可能な胚様体及び脳オルガノイドを形成する手法を確立した。現在、レット症候群患者由来iPS細胞より、健常対照群と同様に胚様体及び脳オルガノイドを作製中である。これらを既定の日数でサンプリングし、1細胞RNA-seqを実施することで、脳オルガノイドに含有される神経系細胞を分類し、各細胞におけるMeCP2の発現の有無による遺伝子発現変動を解析する。同時に、組織学的な解析により、神経細胞の形態に着目した解析等も実施する予定である。 また、脳オルガノイドは発生初期の大脳皮質構造を模した構造体を含有するものの、アストロサイトやミクログリア等の細胞含有率が低いことが知られている。より患者の脳内環境に近い脳オルガノイドを作製するために、健常対照群iPS細胞から、アストロサイト・ミクログリアの高効率な誘導法を検討する予定である。作製したアストロサイトやミクログリアに対し蛍光標識を行い、オルガノイド形成後の複数のタイミングで培養液中に添加し、脳オルガノイドへの浸潤の程度を定量化することで、最適な混合培養のタイミングを検討する予定である。
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[Journal Article] MeCP2 controls neural stem cell fate specification through miR-199a-mediated inhibition of BMP-Smad signaling2021
Author(s)
Hideyuki Nakashima, Keita Tsujimura, Koichiro Irie, Takuya Imamura, Cleber A Trujillo, Masataka Ishizu, Masahiro Uesaka, Miao Pan, Hirofumi Noguchi, Tomoko Andoh-Noda, Hideyuki Okano, Alysson R Muotri, Kinichi Nakashima
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Journal Title
Cell Reports
Volume: ー
Pages: ー
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research