2023 Fiscal Year Annual Research Report
新規遺伝子制御ネットワーク推定手法によるネムリユスリカ乾燥耐性機構の解明
Project/Area Number |
22KJ2664
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
比企 佑介 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ネムリユスリカ / 乾燥耐性 / 遺伝子制御ネットワーク / ネットワーク推定 / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではネムリユスリカの乾燥耐性に関与する遺伝子発現動態および遺伝子制御ネットワークの解析を行うと同時に、そのための技術基盤として、in vivoデータに対し高精度に遺伝子制御ネットワークを推定可能なアルゴリズムの開発を行った。 まず、農研機構黄川田研究室より提供いただいたネムリユスリカ幼虫の詳細な時系列RNA-seqデータに基づき遺伝子の協調発現パターンの解析を行った。その結果、乾燥過程で様々な遺伝子集団が段階的に発現変動しており、ネムリユスリカが乾燥中にどのような遺伝子発現に基づく状態を遷移しているのかを明らかにした。また、それらの遺伝子群の段階的発現変動を説明可能な遺伝子制御ネットワークを推定し、その起点となる因子を特定した。 上記のような解析で頑健かつ詳細な結果を得るためには、遺伝子制御ネットワークの推定をより高精度に行うことが重要である。一方で、時系列遺伝子発現量から遺伝子制御ネットワークを推定する既存の手法では、細胞や生体から実際に取得されたin vivoデータに対する精度が低いという問題点がある。そこで次に、in vivoデータに対して高精度に遺伝子制御ネットワーク推定可能な基盤技術の開発に取り組み、教師なし深層学習に基づく新規推定アルゴリズムを構築および評価した結果、既存手法の精度を上回った。 さらに開発したアルゴリズムを用い、乾燥時のネムリユスリカの遺伝子制御ネットワークを推定したところ、多くの下流遺伝子を制御する因子として推定された転写因子が、特定の遺伝子群で共通した特徴的な発現変動をよく説明していることを確認した。また、その転写因子はネムリユスリカが固有に持つ遺伝子であり、乾燥耐性に重要な因子である可能性がある。これは既存手法では捉えることができなかった知見であり、本アルゴリズムがネムリユスリカの乾燥耐性に重要な因子を特定できる可能性があることを示した。
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