2022 Fiscal Year Annual Research Report
肺炎球菌二次感染モデルを用いたSectm1aが感染自然免疫に及ぼす作用機序の解明
Project/Area Number |
21J21320
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 拓 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | Sectm1a / インフルエンザ / 肺炎球菌 / 好中球応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺炎球菌単独感染に比して、インフルエンザ感染後二次性肺炎球菌性肺炎は、未だに致命的となりえる疾患であり確立した予防法や治療法に乏しい。近年では2009年に新型インフルエンザウイルス感染症の国際的大流行が起きていることからも、インフルエンザウイルス感染後二次性肺炎球菌性肺炎に対する予防法と治療方法の確立は喫緊の問題である。 本研究では、新規性の高い気道上皮細胞産生性サイトカインSectm1aが、気道上皮細胞と免疫細胞のクロストークに及ぼす役割について、肺炎球菌単独感染モデルおよびインフルエンザウイルス感染後二次性肺炎球菌性肺炎モデルを用いて、マウスin vivo実験ならびにマウス気道上皮細胞を用いたin vitro実験の双方を遂行している。新型コロナウイルス感染症流行後のネクストパンデミックなど新興感染症への社会的および医療的対策は国際的急務となっており、呼吸器感染症に共通した自然免疫機構の解明は、新興感染症への対策および治療法の迅速な確立のために、必要不可欠となっている。本研究は、成人肺炎の主たる起因菌である肺炎球菌による細菌性肺炎、およびウイルス感染症後に発症する致命的な細菌性肺炎による急性肺障害について、気道上皮細胞の免疫機構としての役割に注目した新規性の高い研究である。当該年度について、In vivo実験では、気道上皮細胞を起点とした好中球応答および好中球遊走の役割を担うケモカインについて、定性的および定量的な評価が進められた。In vitro実験においては、マウス気道上皮細胞の培養系による実験が遂行されたほか、臨床手術肺検体を用いたin vitro実験の追加検討についても着手がすすんでいる段階にある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、新規性の高い気道上皮サイトカインSectm1aが気道上皮細胞と免疫細胞のクロストークに及ぼす役割について、肺炎球菌単独感染モデルおよびインフルエンザウイルス感染後二次性肺炎球菌性肺炎モデルを用いて、マウスin vivo実験ならびにマウス気道上皮細胞を用いたin vitro実験の双方を遂行できている。 マウス実験を主にしており、そのIn vivo実験では、気道上皮細胞を起点とした好中球応答および好中球遊走の役割を担うケモカインについて、定性的および定量的な評価を進めることができた。Sectm1aの作用ターゲットとして自然免疫機構に関与するIL17A産生性gdT細胞の存在を見つけ出し、この細胞の本感染モデルにおける機能解析を、主に好中球応答に着目してすすめることができている。また前年度に目標としていた、マウス気道上皮細胞の培養系による実験を遂行することができ、気道上皮細胞がSectm1aを放出する刺激のメカニズムなどを追究することができている。臨床手術肺検体を用いたin vitro実験に着手ができ、ヒト気道上皮細胞での再現性を確かめる段階にも入っており、進捗状況としてはおおむね順調と評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、Sectm1aがgdT細胞を含む各リンパ球に与える影響について、主にその結合能に関してフローサイトメトリーを用いたbinding assayでの実験を昨年度より継続して施行する予定である。この実験により、Sectm1aが直接にリンパ球に結合・作用することを観察したい。gdT細胞の役割が本モデルにおいて重要なことを示すため、TCRgd depletion抗体を用いたin vivo実験を追加で予定し、各種サイトカイン・ケモカインや好中球の定量的評価をおこなう予定である。またin vivo実験全般において、肺組織の免疫染色での定性的評価を加えていく。In vitro実験については、WTマウスだけでなくIFNARノックアウトマウスのmTECを用いて1型インターフェロンの刺激実験をおこない、Sectm1a誘導に1型インターフェロンが必須であることを追証する。さらにmTECだけでなく、ヒト手術肺検体から単離した気道上皮細胞を用いて同様のin vitro刺激実験をおこない、ヒトSECTM1の誘導についても評価を予定する。 In vivo実験で得られた特徴を基に、個々の免疫担当細胞及び気道上皮細胞の、Sectm1aやIL17Aを介した自然免疫に対する役割をIn vitro 実験で評価し、IL17Aとその産生細胞(gdT細胞等)を中心としたサイトカインネットワークが感染に対する自然免疫機構との協働性、分子機構を明らかにすることを目指す。
|