2023 Fiscal Year Annual Research Report
冷却リュードベリ原子を用いて解き明かす非平衡強相関系におけるクラスター形成
Project/Area Number |
22KJ2679
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
河村 泰良 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 非平衡量子多体系 / 冷却Fermi原子気体 / FFLO状態 / 非平衡Green関数法 / 非平衡ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
非平衡量子多体系における対形成(クラスター形成)現象を理解するために、2つの化学ポテンシャルの異なる熱浴との接続により非平衡状態に駆動される冷却Fermi原子気体のモデルを考えた。このモデルでは、熱浴間に印加された(化学ポテンシャル)バイアスにより、注目系のFermi原子気体中の粒子は、「2段構造」を持つ非平衡エネルギー分布に従う。この2段構造は、2つの熱浴の異なるFermi準位を反映している。これまでの研究で、この熱平衡Fermi-Dirac分布とは異なる構造を持つ非平衡エネルギー分布により、空間的に超流動オーダーパラメータが振動する、いわゆるFFLOタイプの超流動状態が安定な非平衡定常状態として実現することを明らかにした。 今年度は、熱浴間のバイアスをクエンチした際の注目系の実時間・実空間ダイナミクスを記述できる理論を新たに開発した。これにより、これまでの理論が対象としてきた非平衡定常状態が、どのようなダイナミクスを経て形成されるか調べることが可能となった。具体的には、注目系のオーダーパラメータのダイナミクスを記述する時間発展方程式を、非平衡Green関数法を用いてハミルトニアンより導出した。導出された時間発展方程式は、分布関数の情報を持つ非マルコフな熱浴との接続により、メモリ効果を含む積分微分方程式となる。一般にこのような積分微分方程式は計算コストの面から数値解法が困難であるが、補助場分解法と呼ばれるテクニックを応用することで、メモリ効果を含まない連立常微分方程式に書き換え、計算コストを大幅に削減できることを明らかにした。これにより、バイアスをクエンチして注目系を非平衡状態に駆動した際の、オーダーパラメータの実空間・実時間ダイナミクスを時間依存BdG方程式のレベルでシミュレーションすることが可能になった。
|
Research Products
(6 results)