2022 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌由来のD-アミノ酸が宿主動物の消化管機能に及ぼす影響の解明
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22J00415
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷口 紗貴子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / 腸内細菌 / 腸内分泌細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
消化管内に腸内細菌由来のD-アミノ酸が複数種存在することが確認されているがそれらが宿主動物に対してどのような影響を持つのかはほとんど明らかにされていない。そこで今年度はまず、これらのD-アミノ酸が腸上皮細胞の一種である腸内分泌細胞を刺激するのかを明らかにすることを目的として実験を行った。マウス腸内分泌細胞セルラインSTC-1を用いてCa2+イメージングによりスクリーニングを行ったところ、STC-1の細胞内Ca2+濃度は複数種のD-アミノ酸に反応して上昇し、腸内のD-アミノ酸が腸内分泌細胞を活性化することが示唆された。 腸内分泌細胞の主な役割は消化管内の栄養素等の刺激に応答して様々な消化管ペプチドを分泌することである。よってSTC-1に対する活性が強かったD-アミノ酸について消化管ペプチドの分泌を刺激するかどうか、個体レベルでの検討を行った。野生型マウスにD-アミノ酸を経口投与した場合、およびD-アミノ酸を分解するD-アミノ酸酸化酵素(D-amino acid oxidase; DAO)の機能を欠くために体内D-アミノ酸濃度が野生型と比べて高いマウス(DAO-nullマウス)の血中消化管ペプチド濃度の測定を行った。高濃度のD-アミノ酸存在下で一部の消化管ペプチドの血中濃度が増加する傾向が見られたが、野生型マウスとDAO-nullマウスではいずれの消化管ペプチドも同等の値を示した。以上の結果からD-アミノ酸は腸内分泌細胞を活性化するものの腸内に検出される程度の濃度においては消化管ペプチドの血中濃度を大きく変化させないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度であったが速やかにCa2+イメージング実験系の立ち上げに成功し、便中に検出される主要なD-アミノ酸の腸内分泌細胞に対する活性を調べ終えたため。また、動物実験にも着手しD-アミノ酸が消化管ペプチド分泌に与える影響の個体レベルでの評価を行うことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の結果によりD-アミノ酸が腸内分泌細胞を刺激することが明らかとなった。しかし動物実験においては明確な差が見られず、D-アミノ酸の個体レベルでの役割の解明のための有効な手掛かりは今のところ得られていない。今後さらなる実験条件の検討を行うとともに肥満や糖尿病などの代謝障害モデル動物の体内D-アミノ酸組成の違いに着目しD-アミノ酸組成の変化と代謝障害の関連性を明らかにしていく予定である。
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