2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ2684
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
冨田 拓希 慶應義塾大学, 理工学研究科(矢上), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 絶対ゼータ関数 / 絶対Euler積 / F_1スキーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、(1)絶対ゼータ関数の3つの解析的性質、(2)幾何的対象からの絶対ゼータ関数の“標準的”構成方法、(3)絶対Euler積の幾何的な意味付けについての結果を得た。 まず、東京理科大学の平川義之輔氏との共同研究において、多項式環より広い解析関数のクラスAを導入し、Aの元に対する絶対ゼータ関数(またはその対数)に対して三つの表示(級数表示・積分公式・絶対Euler積)を得た。特に、絶対Euler積という無限積表示についての結果は、自身の先行研究において多項式の場合で既に得られていた絶対Euler積を一般化したものである。 次に、平川氏との共同研究において、従来の方法では一般には絶対ゼータ関数を“標準的に”定められなかったZまたはQ上有限型スキームといった幾何学的対象から絶対ゼータ関数を構成する良い手法を得た。その手法は、幾何的対象のF_q有理点の個数からなる数列を部分的に補間するような「天井/床(Puiseux)多項式」を新たに導入することで可能になった。特に、楕円曲線などWeil予想が成り立ち良い条件を満たす多様体に対して、天井/床(Puiseux)多項式の係数と次数に多様体のBetti数や次元といった幾何的不変量が現れることも発見した。そして、これらの結果に関して論文にまとめ、投稿した。また、この結果を利用することで、モノイドスキームに対する絶対ゼータ関数を一般化する形でS代数のスペクトラムの絶対ゼータ関数を導入することができた。 最後に、絶対Euler積のEuler因子の指数部分が、本質的にはF_q上の多様体や有限グラフの跡公式に相当する部分であることが分かった。これは、平川氏との共同研究において、合同ゼータ関数と伊原ゼータ関数が絶対ゼータ関数で記述でき、それらのEuler積表示が絶対ゼータ関数の絶対Euler積であることを発見したことによる。
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