2022 Fiscal Year Annual Research Report
AMPA受容体異常に着目した統合失調症病態生理の解明
Project/Area Number |
22J11205
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
津川 幸子 慶應義塾大学, 医学研究科(信濃町), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 統合失調症 / AMPA受容体 / PET |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はAMPA受容体特異的に結合するPET薬剤リガンド[11C]K-2を用いて統合失調症におけるA MPA受容体の異常を可視化する世界初の臨床研究である。統合失調症患者及び健常者の脳内AMPA受容体密度を定量・ 比較し、精神症状とAMPA受容体密度の関連を検証する。さらにマルチモーダルMRIで計測した脳内Glu濃度 、機能結合性、白質神経線維統合性等から多面的にGlu神経系神経伝達を評価して、AMPA受容体密度との関連をみることで、AMPA受容体が統合失調症の病態生理において果たす役割を解明する。 本研究はこれまで症候学的所見に依存してきた精神科疾患の臨床診断にAMPA受容体異常の観点から分子生物学的裏付けを与え、将来的には新規治療開発に寄与するものと期待される。 2022年度までの研究実績として、統合失調症40名、健常者70名のAMPA PETの撮像が完了した。SPM及びPMODを用いてPET画像を解析し、AMPA受容体密度を測定、健常者と統合失調症の群間比較を行った。また、統合失調症の症状スコアとAMPA受容体密度の関連を相関解析で検証した。その結果、統合失調症では中帯状回や帯状回膝前部を含む広い領域でAMPA受容体密度が低下しており、重症度と帯状回膝下部及びpost insulaのAMPA受容体密度に負の相関が存在していることが明らかになった。AMPA受容体密度低下が統合失調症の病態生理に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、実験と解析パイプラインの構築を中心とした研究活動を行うことを予定していた。実際に2022年度までに統合失調症40名、健常者70名を組み入れ、AMPA PETの撮像、マルチモーダルMRI撮像、臨床症状評価が完了した。また、PET解析パイプラインも構築し、SPM及びPMODを用いてPET画像の解析および統計解析を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、マルチモーダルMRIで計測した脳内Glu濃度 、機能結合性、白質神経線維統合性等から多面的にGlu神経系神経伝達を評価し、AMPA受容体密度との関連を検証することで、AMPA受容体が統合失調症の病態生理において果たす役割を解明する。また、2022年度で得られたPET解析の結果を踏まえて、学会発表、論文執筆を中心とした研究活動を行う。具体的には、CINP, SIRS, ACNP, SNMMIといった国際学会での発表を予定している。本研究結果は、最終的な医療応用を見据えて精神科学のTop JournalであるA merican Journal of Psychiatryへの投稿を目指す。
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