2023 Fiscal Year Research-status Report
グリシンニューロンによるレム睡眠時筋弛緩メカニズムの解明
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22KJ2729
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
本堂 茉莉 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | Voxel-based morphometry / オペラント学習 / 淡蒼球 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は所属する研究機関を変更したため、実験計画の変更が求められた。 Voxel-based morphometry(VBM)は、様々な神経疾患の患者や健康な被験者の認知機能における脳体積の変化や、認知症と関連する脳形態学的特徴の同定に貢献している。しかしながら、VBMによって検出された脳構造の変化は、灰白質や白質のサイズの変化だけに限定されておらず、具体的な構造変化に寄与する要因は未だに不明である。本研究では、マウスのVBM解析結果に影響を与える要因を掘り下げるため、オペラント学習後のVBM結果と実際の脳の大きさを比較検討した。我々が学習に焦点を当てるのは、学習が脳構造に変化を引き起こすことを示唆するヒトのMRI研究に基づいている。まず、11.7テスラMRIにより、VBMを用いて構造変化を起こすマウスの脳領域を同定し、大脳基底核の構成要素である淡蒼球(GPe)のサイズが有意に増大することを明らかにした。その後、GPeのGABA作動性終末の大きさを測定したところ、オペラント学習後に軸索終末のサイズが有意に増大することが示された。しかし、免疫染色によるGPeサイズの測定では、白質・灰白質を含めて有意な変化は見られなかった。このVBM-組織学間の矛盾を明らかにするため、我々はアデノ随伴ウイルスを用いて、小胞GABAトランスポーター(Vgat)を線条体背側で特異的に過剰発現させた。そして、T2強調画像を通してGPeを観察した。その結果、Vgatの過剰発現はMRI画像の信号強度を増加させ、GPeの実際の大きさを変えることなくボクセル体積に影響を与えることが示された。この結果は、オペラント学習によって誘発されるVBMの構造変化が、シナプス終末におけるVgatの増加によって説明できる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MRIの解析や免疫組織化学の解析は、公正かつ確実に進める必要があるが、大量のデータを着実に解析していった結果、オペラント学習に関わる脳領域の検出とVBM解析の物理的・組織学的変化の根底にあるメカニズム解明に向けた重要な結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究結果により、MRIデータをもとに脳構造の変化を解釈する際に慎重を要することや、GABA作動性神経軸索の終末のサイズが変化するという構造可塑性が新たな発見であり、これを業界で理解させるためにはさらなる介入実験が必要であることが明らかになった。今後は、構造変化を引き起こさない新しい介入方法を開発し、構造変化と行動の関係について調査を進めたいと考えている。
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