2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J00071
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
勝谷 祐子 國學院大學, 文学部, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2026-03-31
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Keywords | ゴシック / 修復保存 / 1400年前後のヨーロッパにおける様式交流史 / 彩飾写本 / 壁画 / 文化財保護 / 《奏楽天使》図像 / 美術史 |
Outline of Annual Research Achievements |
《奏楽天使》図像が死のテーマに結びつく中世後期の壁画についての美術史研究を行っている。サン=ボネ=ル=シャトー、スヴィニー、ル・マン、ケルナスクレダンの礼拝堂壁画を中心に、修復の歴史と保存状況を調査した上で、様式比較により画家を特定し、制作年代を導き出す。次いで各主題がどのように選ばれ、いかなる意図をもって空間内に組み合わされたのかというプログラムの考察を行う。 令和三年度は主にサン=ボネ=ル=シャトー壁画について以下の研究を進めた。礼拝堂穹窿天井に描き出された象徴図案と《奏楽天使》図像がル・マン大聖堂聖母礼拝堂壁画に倣う形で制作されたものであること、またブルボン公とアンヌ・ドーフィヌの墓石彫刻を納めるスヴィニーのヴィエイユ礼拝堂天井画《嘆きの天使》とル・マン壁画、サン=ボネ壁画の図像的、様式的結びつきを明らかにし、アンヌ・ドーフィヌによるサン=ボネ壁画の作品注文とその政治的意図を論じた。様式の問題に関しては、サン=ボネ画家の様式に関連し、オーヴェルニュ地方シャーリウのサン・フィリベール聖堂聖職者席に施された板絵に関する修復保存に関する調査を行い、過去に施された加筆とオリジナル部分との区別を行った。また、板絵が制作当初の状態から一部切り取られ、順序が入れ替えられた可能性があることを理解することができた。このほか《奏楽天使》図像を持つ壁画の現地調査を継続し、ジュネーヴ、ル・マン、ル・ピュイ=アン=ヴレ、リヨン、サン=タントワーヌ=ラベイ、モントルイユ=ブレ他多数の聖堂で14、15世紀に制作された壁画の撮影を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サン=ボネ=ル=シャトー壁画の寄進に関する問題をまとめ、これを含む博論書籍化の準備を進めることができた。《奏楽天使》図像の機能に関する問題をポーランドでの国際学会にて発表、英語論文を投稿した。サン=ボネ市の後援を受け《奏楽天使》図像を持つ壁画に関する研究内容の一部を発表する企画展を開催することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
オーヴェルニュ地方の聖堂に保存される板絵、トゥール図書館所蔵の14世紀末写本装飾にサン=ボネ壁画に極めて近い画家の手を確認することが出来た。これらに関する調査、論文執筆を進める。また《奏楽天使》図像を持つ壁画に関する現地調査を可能な限り進めてゆく。
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