2022 Fiscal Year Annual Research Report
疑似多倍長演算による現代アーキテクチャに適した高速な数値計算アルゴリズムの創生
Project/Area Number |
22J20869
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
内野 佑基 芝浦工業大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 反復改良法 / 混合精度数値計算 / 実対称固有値分解 / 特異値問題 / 高精度計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
近接・重複固有値が存在しない場合の固有値分解及び近接・重複特異値が存在しない場合の特異値分解に対する高精度数値計算アルゴリズムの開発に従事し,以下の研究を実施した. (1) 先行研究では,ある数値計算法によって得られた近似固有ベクトルの精度を改善する反復改良法が提案されている.この手法は主に高精度行列積で構成されており,またすべての演算は高精度に計算する必要があるとされていた.本研究では一部の計算を低精度に計算しても同様の収束性をもつことを示し,1反復当たりの高精度行列積の回数を削減できた.コンシューマ向けGPUやスーパーコンピュータ「富岳」などの様々な環境での数値実験により,提案手法の高速性を明らかにした. (2) (1)で開発した手法を基に,1反復当たりの高精度行列積をさらに削減した混合精度反復改良法を提案した.本アルゴリズムは先行研究と同程度の収束性をもちながら1反復当たりの計算時間が削減される. (3) (1)と同様に,先行研究によって提案されている特異値分解に対する反復改良法を混合精度数値計算アルゴリズムへ拡張し,1反復当たりの高精度行列積の回数を削減した. (4) (3)で開発した手法を基に,1反復当たりの高精度行列積をさらに削減した混合精度反復改良法を提案した.本アルゴリズムは先行研究と同程度の収束性をもちながら1反復当たりの計算時間が削減される.(2)と同様に,数値実験によって提案手法の高速性を明らかにした. また,エラーフリー変換を用いた高速な高精度行列乗算アルゴリズムについて,グラム行列を生成する行列積に対する効率的なアプローチを提案した.さらに,様々な精度保証法で必要な3つの行列の積の包含について,従来法よりもタイトな結果を同等の計算コストで得る手法を提案し,それに対する誤差解析も行った.以上の成果について,学会発表や論文投稿も実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,行列積・固有値問題・特異値分解などの幅広く応用される数値線形代数の諸問題に対して,近年のアーキテクチャの特性を活かした高精度数値計算アルゴリズムを開発することである.初年度は固有値分解及び特異値分解に対する高精度数値計算アルゴリズムの基盤を創生できた.また固有値分解に対するアルゴリズムの誤差については,おおむね解析ができている.さらに,近接・重複固有値が存在する場合に対するアルゴリズムの開発も順調に進んでおり,数値実験による性能評価を控えている状況である. また,高精度行列乗算アプローチの開発についてはアルゴリズムの構想を設計済みであり,方針の策定が完了している.
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は固有値分解に対する高精度数値計算アルゴリズムの研究を継続する.提案手法及び先行研究に対して混合精度演算を使用した場合の誤差解析を与え,どちらの結果も同等の精度をもつことを解析的に示す.すべての演算を高精度に行った場合と同等の精度を得るために必要な低精度演算の条件を明らかにすることも重要である.また,近接・重複固有値が存在する場合について,それらの判定方法やそれらに対する例外処理の開発も実施する. さらに,これらの高精度数値計算アルゴリズムの高速化を目的とし,アルゴリズムの主要な計算である高精度行列積の高速化に従事する.高精度行列積については,行列積に対するエラーフリー変換を用いた高速かつ高精度な計算手法が提案されている.本研究では,この手法を効率化・高速化する新たなアプローチを開発し,高精度行列積の高速化を図る.アルゴリズムの構想はすでに設計しているため,これに基づきアルゴリズムの構築を実施する.
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