2021 Fiscal Year Annual Research Report
権力の批判理論の構築:フランクフルト学派、フェミニズム、人種の哲学を架橋する試み
Project/Area Number |
21J00128
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
成田 大起 成蹊大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 批判理論 / 権力 / フェミニズム / 人種の哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フランクフルト学派研究とフェミニズム、人種の哲学研究を架橋することで、ジェンダー規範の社会的構築や内面化、人種差別による社会的排除などの権力現象を分析し、批判できる新しい批判理論を構築することである。 2021年度は、社会規範や社会構造が持つ権力現象を分析すべく、受け入れ教員である野口雅弘教授の助言を仰ぎながら研究を行った。当初の計画では、2021年度後期はフランクフルト大学に滞在し、批判理論の権力研究で知られるライナー・フォアスト教授のもとで研究を進める予定であった。しかし、新型コロナウイルスの感染状況から滞在を断念し、フランクフルト学派研究、フェミニズム研究、人種の哲学研究の文献講読と論文執筆の作業を中心に研究を進めた。 研究内容で言えば、野口教授の助言によって、ジェンダー規範や政治制度が持つ構造的な権力が、いかにしてグローバルな資本主義経済と結びついているかを認識するに至った。ジェンダーや人種における不正義に対する資本主義の影響(例:racial capitalism論)を考慮することは、批判理論研究をより充実したものにすると考えた。この研究成果は、「資本主義がジェンダーや人種における不正義とどのように関わるか、どのように批判理論の観点から分析が可能であるか」を主題として、成蹊大学で行われた政治学研究会で報告を行った。現在、この報告をもとにして、2022年度中の論文執筆に向けて研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、新型コロナウイルスの感染状況によって、フランクフルト大学に滞在し、ライナー・フォアスト教授のもとで権力の批判的分析を行うという計画を達成することができなかった。その代わりに、受入研究者である野口教授のもとで研究を遂行し、社会構造それ自体が有する権力を、資本主義の経済構造と結び付けて議論を行う必要性を認識するに至った。したがって、今後の議論の進展状況によっては、当初の予定よりもより広く研究を発展することができる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、2021年度の研究成果をふまえ、二つの研究を実施する。 ①フェミニズムと「人種資本主義(racial capitalism)」の議論をふまえ、資本主義の経済構造が持つ権力現象の分析と、フランクフルト学派 の批判理論を接続させる。 ②フェミニズム認識論と人種の哲学の議論をふまえ、イデオロギーの社会的構築や認識的不正義などの認識に関わる権力現象を分析し、フランクフルト学派の批判理論と接続させる。 ①②の研究は、主に文献講読を中心に進める。その成果は、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いた場合、フランクフルト大学で実施される学会や、New School for Social Research(ニューヨーク)で行われるサマースクールなど、批判理論をフェミニズムや人種の哲学に近づけ て理解しようとする国際会議で報告し、フェミニズムや人種の哲学の専門家と議論を深めていく。また研究内容は、①はPhilosophy & Social Criticismなど、②はJournal of Political Powerなどの国際査読雑誌の掲載を目指す。
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