2023 Fiscal Year Annual Research Report
権力の批判理論の構築:フランクフルト学派、フェミニズム、人種の哲学を架橋する試み
Project/Area Number |
22KJ2757
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
成田 大起 成蹊大学, 法学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 批判理論 / ジェンダー / 人種の哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、フランクフルト学派、フェミニズム、人種の哲学研究を架橋することで、ジェンダー規範の内面化や人種差別による社会的排除などの権力現象を分析し、批判する新たな批判理論を構築することである。 2023年度は、これまでの研究成果を踏まえてアウトプット活動を行い、本研究全体の研究成果を書籍や論文として仕上げることができた。第一に、ジェンダー規範や人種規範が持つ社会構造的な権力現象についての分析が、国際査読誌(Constellations)に採択され、2023年8月に公開された。この論文では、社会規範の作用によって人々が不利なアイデンティティを内面化してしまう現象を「構造的権力」として捉え、この権力現象を批判すべく、正当なアイデンティティとそうでないアイデンティティを区別する基準を提示した。 また、ハーバーマスやホネットをはじめとしたフランクフルト学派研究についてのこれまでの研究成果をふまえた単著が2023年8月に出版された。この単著では「批判」の概念に焦点を当て、社会構造的な権力や不正義をどのように批判することが効果的であるかを探求した。著書は、不正に対して参加者(私たち一般市民)が行う日常的な批判の行為を「一階の批判」として、一般市民による一階の批判がさまざまな要因によって機能不全に陥っている現象を分析する理論的な営みを「二階の批判」として概念化し、批判理論と批判的実践の影響関係を明らかにした。 さらに、ジェンダーや人種に関する不正義が資本主義社会の制度構造と関連していることを分析した論文が、国内査読誌に採択され、公刊された。この論文では、現代の金融化する資本主義の構造が、ジェンダー不平等や人種差別を維持している一つの要因であることを明らかにし、その構造を乗り越えるための連帯の必要性を示した。
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