2021 Fiscal Year Annual Research Report
数値解析技術とAIを融合した洪水氾濫予測システムの開発
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21J21704
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊藤 毅彦 東京理科大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 洪水氾濫予測 / 数値解析 / データ同化 / 流域治水 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の洪水災害による人的・物的被害は極めて深刻である.こうした被害の軽減を目的に,洪水氾濫予測システムを構築するべく,以下の①,②,③に取り組んだ. ①水系単位の警戒レベル4相当雨量を基準とした氾濫危険確率予測システムの開発:過去の洪水時の降雨・河川水位の観測データを用いて,日本全国109の一級水系において水系毎の氾濫危険水位に相当する降雨量(Lv4雨量)を算定した.また,このLv4雨量とリアルタイムのアンサンブル予測降雨データを用いて,24時間先までの氾濫危険性を予測するシステムを確立した.本システムを2020年7月豪雨に適用したところ,実際に甚大な氾濫被害が生じた筑後川や球磨川の流域では12時間以上前から氾濫危険性を予測できており,本予測システムが住民の事前避難の一助になる可能性を示唆した. ②数値河川流モデルと多地点観測水位のデータ同化による新たな河川流解析の枠組みの構築:通常設置されている水位計に加えて,危機管理型水位計の設置が進んでおり,日本全国の河川で水位観測ネットワークの高密度化が実現されつつある.これを活かして,数値河川流モデルと多地点観測水位のデータ同化を組み合わせた新たな河川流解析の枠組みを構築した.本手法を千曲川洪水流に適用したところ,支川流量を付与しなくとも,時々刻々逆推定しつつ,本川の縦断解析が概ね高精度で可能であることを示した. ③流域全体での洪水氾濫予測に向けた流域統合型の数値解析モデルの開発:流域治水で提案される様々な洪水調節効果を反映できる数値解析モデルの開発を行った.本年度は,田んぼダムによる洪水調節効果を組み込んだ分布型流出解析モデルを構築し,鹿島川流域に適用して洪水調節効果を定量的に評価した.今後は他の流域治水メニューを組み込んだモデリングを進めていき,流域全体の水動態を計算可能な数値解析モデルを構築していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
洪水氾濫予測の実現に向けて,日本全国109のi級水系を対象とし,既往洪水における降雨・河川水位の観測データの解析を行った上で,これらに基づく氾濫危険性の予測システムを開発した.現在,本システムはリアルタイム運用を行っている段階まで進展している.また,河道の水位・流量の高精度な推定を目的とした数値河川流モデルの及び流域全体での洪水調節効果を組み込める流域水動態モデルの開発・構築を行った.これらの数値解析モデルは,洪水危険度の時空間分布の評価と河川氾濫の発生を予測する上で重要であり,本研究課題の基盤となるため,翌年度に繋がる研究を進めたといえる.以上のことから本年度は概ね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで開発を進めてきた流出や流下,氾濫のモデリングを引き続き行う.本モデルを実流域・実洪水事例に適用することで,モデルの適用性の確認及び問題点の検証を行うことが課題である.その上で,洪水氾濫を事前に予測することを試みることが次の課題であり,このプロセスでAIの導入を予定している.
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