2022 Fiscal Year Annual Research Report
マウス生得的行動中枢で発見した新規脳領域の巣作り行動における機能解明
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22J20144
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
田川 菜月 東邦大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 巣作り行動 / c-Fos / 外側視索前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は予備実験にて、巣作り行動時に視索前野の一部の領域でc-Fosの発現が増加するということを組織学的に明らかにしていた。これは、視索前野に巣作り行動時に活動する神経細胞群が存在することを示唆する。この視索前野におけるc-Fosの発現上昇が巣作り行動に特異的なものであるかの検討を行うため、自発的に起こる巣作り行動の特性を詳細に把握した上で、より細かな行動条件を複数設定した。まず、ホームケージ内のマウスの1日の行動を観察し、ケージ内で行われる巣作り行動の日周性を記録した。マウスは明期と暗期開始後1時間には巣作り行動をほとんど行わないことを観察した。この結果を基に、「①明期に巣作り行動を誘導する刺激を与え、巣作り行動を行ったマウス」「②明期に何も刺激を与えず、休息しているマウス」「③暗期開始直後に何も刺激を与えず、活動しているマウス」という3条件でc-Fosの発現を比較した。また、c-Fosを発現する神経細胞の性質を明らかにするため、c-Fosの免疫染色とin situ法によるVgat, Vglut2 mRNA(抑制性・興奮性神経細胞の指標)の検出を同時に実施した。
3条件のc-Fosの発現を比較した結果、外側視索前野でc-Fosを発現した細胞のうち、Vgat mRNAを発現した神経細胞数は条件①でのみ増加していることが明らかとなった。これは、外側視索前野における抑制性神経でのc-Fosの発現は、巣作り行動に特異的な神経活動を反映している可能性が高いことを示す。
ここまでの成果は論文にまとめ、国際誌への投稿準備を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
巣作り行動に関連する複数の行動条件でのc-Fosの発現を比較することで、この視索前野でのc-Fosの発現は巣作り行動特異的な発現である可能性が高いことを示唆する結果を得られた。 また、c-Fosの免疫染色と同時にin situ法によって複数の遺伝子のmRNAの検出を行うことで、視索前野のうちの外側視索前野でc-Fosの発現が増加していたということや、c-Fosを発現していた神経細胞のうち抑制性の神経細胞の数のみが巣作り行動時に特異的に増加するということを明らかにできた。 以上から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
外側視索前野に見出した神経細胞群(神経細胞群A)が巣作り行動の制御を行うかの検討を、神経活動の操作実験によって行う。 現在すでに神経細胞群Aの細胞マーカーとなる遺伝子の候補を検討している。この遺伝子のプロモーター下流に組換え酵素Cre遺伝子が組み込まれたCreドライバーマウス(Creマウス)を使用する。このCreマウスに対して、人工受容体であるhM3DqまたはhM4Di遺伝子をアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)によって外側視索前野に局所発現させる。この受容体にClozapine-N-oxide (CNO)が結合すると、神経活動が促進または抑制される。hM3DqまたはhM4di遺伝子を発現させたマウスにCNOを投与し、そのマウスの巣作り行動を観察する。巣作り行動が促進または抑制された場合、神経細胞群Aが巣作り行動を制御する可能性が支持される。
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