2023 Fiscal Year Annual Research Report
本居宣長の詩学とその思想との連関ー表現論的観点から
Project/Area Number |
22KJ2825
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
藤井 嘉章 日本大学, 文理学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 本居宣長 / 本歌取 / 縁語 / かけ合 / 荻生徂徠 / 次韻 / 格調 / 平仄 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度に実施した研究の第一の成果が「本居宣長の歌合判詞の研究試論(一)―評語「かけ合」に着目して」(『日本文学研究』第六三号・2024年2月)である。『本居宣長全集 別巻二』「歌合評」を対象として、本居宣長の歌合判詞について、その内実を記述した。宣長の和歌注釈から析出していた評語「かけ合」が持つ以下の内実:①句切れのとゝのひ、②一首内の二つの事柄が和歌的世界において共起することの必然性、③一首内の二つの事柄間における対照、④上下句の心の深さの均衡、⑤詞上・意味上の繋がり、⑥縁語関係を示しているもの、が「歌合評」において門人の和歌詠作を洗練するための指導の枠組みとして用いられていることを明らかにした。 第二の研究成果が「荻生徂徠の平仄意識 ―『徂徠集』七言律詩の平仄調査を通して―」(『樹間爽風』第3号・2024年3月)である。徂徠詩の平仄意識に関して、七言律詩に絞って調査を行った。その結果、①荻生徂徠は両韻字を用いる場合、意義と音が一致せずとも平仄を融通して用いていたこと、②下三平・孤平を番の句において平仄を反転させることで格調を整えようとしていること、③孤平は「●●●○●●○」の形のみと意識していたこと、を明らかにした。 研究期間全体を通じて、宣長の和歌解釈における本歌取と縁語について、これまで一括りに扱われていた内容について、分析的視点に諸相があることを具体的に明らかにし、宣長自身の詠作を分析するための基盤を用意した。また徂徠派詩学については、これまで手薄であった徂徠自身の詩作に関して、和歌的発想に基づく表現意識と格調を保とうとする構成意識を明らかにした。
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