2022 Fiscal Year Annual Research Report
ポストコロナ社会における生活環境の量的・質的変化に関する地理学的研究
Project/Area Number |
22J00179
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
岩井 優祈 日本大学, 文理学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス / COVID-19 / 生活の質 / QoL / 量的研究 / 質的研究 / 地理情報システム / GIS |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルスの流行は世界中に大きな影響を与えた.人々は自宅に留まるよう指示され,多くの活動がオンライン上で代替されるようになった.これに伴い,都市空間や社会的な価値観にも変化が生じた.本研究では,このような状況下において人々の生活の質がどのように変化したのかを明らかにすることを目的としている.また,研究成果を今後の都市計画に活かすことも目指している.本研究において特筆される点は,都市空間の物質的変化と人々の生活の質に対する価値観の変化の相互作用に注目している点である. 令和4年度には,本研究において特に重要な都市空間の物質的変化についての調査が進展した.東京都を事例に,2019年から2021年にかけて店舗の業種構成がどのように変化したかを地理情報システム(GIS)を駆使して明らかにした.小地域を分析単位として27種類の業種を対象に分析を行い検討した結果,人々の生活様式の変化は一様ではなく,地域的差異が存在することがわかってきた.例えば,オンラインショッピングで代替可能な業種の実店舗は全体的に減少する傾向がみられたが,都心部と周辺部ではその傾向の大きさが異なることが明らかになった. また本研究では,都市の物質的環境と人々の心理的環境の相互作用をGISで一元管理して分析する手法の開発にも取り組んだ.この手法により,都市空間の変化が人々の生活の質に与える影響をより正確に評価することができるようになった.この研究成果を国際学会(Asian Conference on GeographyおよびAAG Annual Meeting)で発表し,今後の調査に役立つフィードバックを得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では上述の通り,新型コロナウイルスの流行によって人々の生活の質がどのように変化したのかを明らかにすることを目的としている.令和4年度には,本研究において特に重要な都市空間の物質的変化についての調査を進展させることができた.東京都を事例に,2019年から2021年にかけて店舗の業種構成がどのように変化したかを地理情報システム(GIS)を駆使して明らかにした.小地域を分析単位として27種類の業種を対象に分析を行い検討した結果,人々の生活様式の変化は一様ではなく,地域的差異が存在することがわかってきた.例えば,オンラインショッピングで代替可能な業種の実店舗は全体的に減少する傾向がみられたが,都心部と周辺部ではその強弱が異なることが明らかになった. また本研究では,都市の物質的環境と人々の心理的環境の相互作用をGISで一元管理して分析する手法の開発にも取り組んだ.この手法により,都市空間の変化が人々の生活の質に与える影響をより正確に評価することができるようになった.ポストコロナ社会における都市の物質的変化を解き明かすことに成功したため,次は都市に暮らす人々の生活意識について調査を進めることが可能になった.
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Strategy for Future Research Activity |
ポストコロナ社会における都市の物質的変化を解き明かすことに成功したため,次は都市に暮らす人々の生活意識について調査を進めることが可能になった.すでに来年度の調査に向けた準備として,東京都に住む20世帯を対象に,新型コロナウイルスが流行する以前と以降における日常生活の変化について聞き取り調査(予備調査)を行った.その結果を踏まえて,アンケート調査を実施する予定である.さらに,アンケート調査の結果,追加調査の協力が得られた世帯を対象に,新型コロナウイルス流行前後における移動に対する意識の変化,および生活の質の変化について,聞き取り調査(本調査)を実施する.なお,アンケート調査によって得られた聞き取り調査への協力者数が不足した場合は,スノーボールサンプリングを導入する.その際には,調査参加者の属性(職業やライフスタイル)が偏らないよう留意する.これらの調査結果を踏まえて,受入教員と議論し,論文を投稿することを予定している.
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