2022 Fiscal Year Annual Research Report
人為的撹乱に脆弱な種は,種特異的な生態系サービスを提供するか?死肉除去をモデルに
Project/Area Number |
22J20335
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
橋詰 茜 日本大学, 生物資源科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 生態系サービス / スカベンジング / 動物死体 / 自動撮影カメラ / 生物間相互作用 / モンシデムシ / クロバエ / 食肉目 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,人為的な環境改変による死体利用者の変化が,病原菌の蔓延リスクの低減という生態系サービスに対してどのような影響をもたらすのかを定量的に評価することである.人への感染リスクが高い病原菌を簡便かつ高感度で検出できる食品衛生用の検査キット「ペトリフィルム培地」を活用し,さまざまな景観において,1)死体除去機能を果たしている動物種の特定及び処理速度の評価,2)死体周辺への病原菌拡散量の定量化,3)階層ベイズモデルによるこれらの結果の統合に取り組み,人為攪乱に対して脆弱なモンシデムシ類による特異的な貢献を明らかにする. 修士課程から継続している脊椎動物の死体利用に関する研究から,脊椎動物スカベンジャーによる除去効率は,死体の種類(由来する種や分類群)によって異なることが分かってきた.このため,本年度はまず,調査地である房総半島南部地域において,どのような種がどのように分布しているかを調査し,実験に使用する適切な動物死体の種類を検討することにした.調査地を2kmメッシュに区切り,メッシュ内にランダムに計200台の自動撮影カメラ(Strike Force HD PRO,Browning社)を設置した.3か月に1回程度,カメラのメモリーとバッテリーの交換および点検を行った.この結果,イノシシ,アナグマ,タヌキ,アライグマ,ハクビシン,ネコの6種の潜在的な脊椎動物スカベンジャーが生息していることが分かった. また,大学の実験室において,ペトリフィルム培地と実験用マウスの死体を使用し,病原菌拡散量の定量化のための予備実験を繰り返し行った.対象は大腸菌,黄色ブドウ球菌,およびサルモネラ属菌とした.予想していたとおり,死体からこれらの病原菌が検出され,時間とともにコロニー数が増加することが分かった.現在,この予備実験を踏まえて,野外で実施するための実験プロトコルを作成中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自動撮影カメラの設置点を選定できた点,野外での操作に不安のあったペトリフィルム培地実験の準備を整えることができた点など,現地調査を本格的に開始する目途が立ったことからおおむね順調であると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は当初の計画通り現地調査とデータ解析を進めていく.まずは,現在カメラを設置している地点の一部に動物死体を設置し,「1)死体除去機能を果たしている動物種の特定及び処理速度の評価」に関するデータを取得する.つぎに,作成中の実験プロトコルに基づいて,「2)死体周辺への病原菌拡散量の定量化」を行う.これらが順調に進んだ際には,データを速やかにまとめて,学会で成果を報告する予定である.
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