2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of the State Formation Process in Maya Society from the Perspective of the Distribution of Cross-Cultural Prestige Materials
Project/Area Number |
21J00173
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
今泉 和也 明治大学, 明治大学, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 国家形成 / 社会発展モデル / 数理モデル利用 / 新学術領域設定 / 土器生産と流通の統御 / 威信材生産 / 異文化接触 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請時に計画していた調査研究は①グアテマラにおける蓋・高台付き碗の資料集成、②ティカル遺跡における発掘調査、③日本国内における爪形文土器の胎土分析に関わる調査の3点である。コロナ禍の影響を受けつつも②と③については想定以上の成果が出ている。 ①についてはティカル国立公園における資料調査を進めている段階である。各試料の撮影は終えているが胎土分析は終了していない。計画ではグアテマラ全土における資料集成の完了を目指しており、継続課題となっている。 ②についてはこれまでの調査史においてそして現在もであるが、考古学者は神殿や宮殿といった大型建造物(上位0.5%)を対象とした調査ばかりを行っており、データに大きな偏りがあった。申請者はこの偏りを無くすべく、ティカル国立公園エリア4Fにおいて中小規模のマウンド群を対象に発掘調査を実施した。結果として古典期ティカルにおける社会階層がこれまで論理的に3階層に分類されてきたものを考古学的証拠に基づき7つに区分することに成功した。また各階層における様々な遺物の分布、つまり「経済的な社会格差」を明らかにすることができ、それを数式・グラフとして視覚化することに成功した。この成果は考古学史上初の高位理論の提唱に結び付き、法則定立的研究を志向する考古学一分野として考古物理学という新学術領域の設定が可能と考えている。 ③については予定通り北海道と沖縄において河川・湖沼に堆積する砂や粘土のサンプリング調査を実施し、各地の爪形文土器の分析も実施することができた。これにより日本国内最初期の土器群の在地性とその拡散、各地の交流について議論するためのデータを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2021年5月に北海道(湧別町周辺、帯広市周辺、厚岸町周辺)の河川・湖沼に堆積する砂・粘土試料のサンプリング調査を実施した。また各自治体が所蔵する土器資料(爪形文土器、擦文土器、トビニタイ式土器、暁式土器)の胎土中砂粒組成に関する分析を実施した。これによりこれまでの調査と合わせて北海道の河川砂粒試料の約4分の1のサンプリング調査を終えた。土器に対する資料調査と砂粒のサンプリング調査は継続課題であり、2年前3年目の中で北海道(北方四島を除く)における砂粒試料のサンプリング調査を完了見込みである。 7月には沖縄県うるま市、藪地洞窟遺跡出土の爪形文土器の胎土中砂粒組成に関する分析を実施した。また沖縄本島の河川・湖沼に堆積する砂・粘土試料のサンプリング調査を実施した。本調査により沖縄本島の砂粒試料の約半分のサンプリング調査を終えた。本件も継続課題であり、予定では3年目の調査時に沖縄本島及び奄美大島における砂粒試料のサンプリング調査を完了する予定である。 2022年1月~3月にグアテマラ、ティカル国立公園にて発掘調査を実施した。エリア4Fにおける中小サイズのマウンド群を発掘し、古典期後期ティカルの社会階層の理解を深め、また土器工人などのミドルクラス集団に帰属するであろうマウンドサイズの推定を行うためのデータを取得した。本件も継続課題であり、ひと周り規模の大きいマウンドに対する発掘調査と、先古典期・古典期前期相当のマウンドに対する発掘調査が必要となっている。また同期間にティカル周辺の湿地帯における粘土試料のサンプリング調査を実施予定であったが、ラ・ニーニャ現象の影響で降雨量が極めて多く乾季に関わらず水量が多かったため2022年4月以降に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
蓋付き・高大付き碗の資料調査については2年目にティカル国立公園における調査を完了し、3年目にグアテマラ国立考古学民族学博物館における調査を実施する予定でいる。また他の予算確保状況にもよるが、3年目の乾季(6月頃)にグアテマラの河川砂に対する長期のサンプリング調査を実施し、一気に完了させる見込みである。上記以外の中小博物館における資料調査はコロナ禍では実施が困難であり、今後の課題となる見込みである。 ティカル国立公園における発掘調査は想定以上の成果が挙がっており、2年目・3年目での更なる大きな躍進が期待できる。1年目の成果として古典期後期ティカル社会を7階層に分類した内、レベル6のマウンドに対する調査とデータ取得が必要であり、2年目に実施予定である。またこれまでのデータが全て古典期後期のものであるため、時系列データを取得するために3年目には先古典期・古典期前期のデータ取得を目指してティカル内の別エリアで発掘調査を実施する必要がある。これらの時系列データを取得できた場合、国家形成過程と国家の成熟過程に関する考古学史上初の数理モデルの構築が可能となり、大きなインパクトとなることが期待される。またティカル周辺の湿地帯及びグアテマラ全体における河川に対するサンプリング調査は2年目~3年目を通じて完了させる見込みである。 国内調査に関しては沖縄本島、奄美大島、九州における爪形文土器と河川砂に対する資料調査・サンプリング調査を継続的に実施する予定である。沖縄本島・奄美大島における河川調査は完了予定であるが、九州に関しては継続的課題となる見込みである。
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