2022 Fiscal Year Annual Research Report
界面方程式の自由境界問題における特異性をもつ進行波面の研究
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22J00458
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
森 龍之介 明治大学, 明治大学, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 外力項付き曲線短縮流 / 自由境界問題 / 特異点 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,外力項付き曲線短縮流の自由境界問題について,時間発展の途中で解曲線の端点以外で生じる特異性の解析を行った. (1)解曲線の端点以外で生じる特異点の性質:まず,既存の結果を用いて弱解の時間大域的な存在を示し,弱解が局所時間内では古典解になることを示した.次に,最初の特異点発生時刻(以下では特異時刻と呼ぶことにする)において,特異点の個数が有限個であることと,特異時刻を過ぎると瞬時に解の正則性が回復し古典解になることを示した.さらに,特異時刻の集合が集積点をもたないことを示した. (2)角のある領域における自由境界問題の解の構成:開き角が180度よりも大きい扇型領域において,領域の境界と直交する半直線を初期値とする外力項付き曲線短縮流の自由境界問題の解を構成した.構成方法は,まず元の領域を近似するなめらかな近似領域において自由境界問題の解を構成する.次に近似領域を元の領域に近づける極限をとることで,元の領域における解を捉える.この方法で構成された解曲線は,その端点が領域の角以外にあるときは古典的な自由境界問題の解として振舞い,端点が領域の角にあるときには領域の境界とのなす角度が一定の範囲にある間は固定端の解として振舞うことが分かった. (3)角のある障害物に対する解の振舞:開き角が270度よりも大きい扇型領域において,領域の境界と交わらない直線を初期値とする外力項付き曲線短縮流の自由境界問題の解を上述の(2)の方法で構成した.解曲線は有限時間で領域の角に接触するが,それ以降は(2)の解と同様の振舞をすることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究目標は,波状境界をもつ2次元帯状領域における自由境界問題に対して,進行波の存在と定常解の非存在の同値性を示し,進行波の存在・非存在の幾何学的条件を明らかにすることであった.本年度は解曲線の端点以外で生じる特異性に関して,研究目標の達成に肯定的な特異点の構造を解明できた.また,角のある領域における自由境界問題という,研究過程で現れた新たな課題に対しても一定の成果があった.しかしながら,解曲線の端点で生じる特異点の構造が未解明であり,本年度の研究目標の達成には至っていない.以上を踏まえて,本年度の研究はやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず解曲線の端点で生じる特異性の構造解明を目標に研究を進める.それと同時に,2次元帯状領域の境界の形状に関して,突起が周期的に配置されている場合に状況を制限して,進行波の存在・非存在の幾何学的条件を明らかにすることも目標とする.この制限された状況下では,進行波の存在・非存在の幾何学的条件が見やすくなるだけでなく,Matano-Nakamura-Lou 2006の研究にあるような均質化極限を考えることで,進行波の速度と領域の形状との関係も調べられる.これによって,領域の境界に周期的に配置された突起の間隔が密になるほど進行波の速度が速くなる,という新しい現象が予想される. また,研究過程で見つかった新たな課題である,角のある領域における自由境界問題に関しては,まだその弱解の理論が不明瞭なので,本研究で構成した解を数学的に特徴づける理論の構築を行っていく予定である.
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