2022 Fiscal Year Annual Research Report
無住化集落に対する元住民の生活意識と働きかけについての社会学的研究
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21J01289
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
岡田 航 立教大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 山形県 / 山村 / 集落社会 / 無住化 / 過疎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主要な調査事例地にあたる山形県におけるデータ収集に注力した。新型コロナウイルス感染症の影響により、前年度は質的社会調査の本格的な実施が困難だったため、現場でのデータ収集を延期を含めた、当初の研究計画の変更を余儀なくされていたからである。本年度も感染状況を注視しながらの調査となったが、以下のような成果を得ることができた。 感染対策の緩和が進まず、たびたび感染拡大期が訪れた夏季までは、インタビュー調査や参与観察の実施は控え、山形県立図書館や各市町村立図書館、山形県庁行政情報センター、山形県公文書館等での資料収集を集中的に実施した。山形県の無住化集落の実態をマクロ的に析出するとともに、調査を進めた結果、集落再編成という形で行政主導による集落無住化が進展した1970年代の行政資料を大量に確認し、当時の状況について体系的に把握することができた。これにより、どの集落でどのような調査を行えばよいか、具体的な調査対象地選択が可能となった。 いわゆる第7波が終息した秋季以降、それまで得た資料分析の結果をもとにして、質的社会調査を本格的に進めた。計10集落の住民への聞き取り調査の他、民俗行事への参与観察も実施した。各集落において無住化がどのような背景のもとで進展したのか、集落の無住化後、どのような管理活動が行われてきたのか等の基礎的な情報を収集することができた。 年間を通じて貴重なデータを多数得ることができ、合わせて分析作業も進展した。最終年度にあたる次年度、研究をまとめるための足場を固めることができた一年だったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も新型コロナウイルス感染症の終息の見通しが立たず、調査計画の変更を余儀なくされた点がある。本研究課題の主要対象地にあたる山村集落は医療資源が乏しく、また研究対象者も高齢者が多くなるため、感染リスクには一層の配慮が必要とされると判断したためである。そこで前記した状況にあった夏季までの間、対面での聞き取り調査や参与観察を避け、現地調査は文字資料の収集を集中的に行う計画へと変更した。集中的な調査を行った結果、地域資料、郷土資料からは調査対象地の歴史的な状況について体系的に理解することができ、後の質的社会調査実施をより高いレベルで実施することにつなげることができた。また過去の行政資料からは、集落無住化に影響を与えた政策について把握することができた。 前述した通り秋季以降、本格的な質的社会調査の実施へと歩を進めることができた。これまでの綿密な準備があったこともあり、スムーズな調査を続けることができている。 本年度もコロナ禍と向き合わざるを得ない状況は続いたが、そのようななかでも実現可能な調査計画を試行錯誤のうえ立てていった結果、本研究課題遂行にあたり重要な知見を多く得ることができた。このことから、本研究課題は「おおむね順調に進展している」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず集中的に行っていくことになるのは、無住化集落の管理活動への参与観察である。前記した理由のために、参与観察の実施は冬季のみに限られてしまっている状況であるが、実際にはこれら活動は通年で行われているし、むしろ豪雪地帯であるため春~秋に集中的に実施されるものである。こうした質的社会調査を通じて、より多角的なデータ収集に努めていく。 そのうえで調査計画の最終年度にあたることから、研究のまとめに入る。分析作業を通じて得られた知見を研究会や学会大会等での報告や、論文の執筆についても進めていきたい。
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