2021 Fiscal Year Annual Research Report
アンティル文学の言説をめぐる包括的研究―地方主義文学からポスト・クレオール性まで
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21J01188
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
廣田 郷士 早稲田大学, 法学学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アンティル / アフリカ / フランス語圏文学 / 脱植民地化 / 文学史 / エコポエティック |
Outline of Annual Research Achievements |
22年1月からの三ヶ月という例外的な採用開始となったため、本年度は具体的な研究成果を公表するのではなく、今後必要となる大量の文献を入手・分析に集中するとともに、アンティル文学史研究のための理論的な整理を中心に研究を実施し、今後の研究の土台と射程を明確化した。 地域文学史研究においてはジャック・コルザニの大著『フランス領アンティル・ギアナ文学』全六巻における地域文学史の記述を確認するとともに、アントワーヌ・コンパニョン『文学史の誕生』の分析から、文学史理論そのものを歴史化・相対化する作業を行った。またとりわけ英米圏で盛んな、地域横断的なフランス語文学史記述についても分析を進めた。ドゥニ・オリエ『新フランス文学史』(1989年)とその衣鉢を継ぐ研究成果であるクリスティー・マクドナルド『フレンチ・グローバル』(2011年)らによる、一国史的記述を超えたグローバルな時空間の中でのフランス語・文学史を位置づけるアプローチ法である。近年目まぐるしく変わるこれらの文学史認識のパラダイム・シフトを整理し、本研究の理論的枠組を構築した。 これと同時に、エコポエティックないしはエコクリティシズムと呼ばれる文学研究の手法をポストコロニアル理論へと接合し、第三世界の文学を自然から発する文学的抵抗として把握しようとする先行研究の整理を行った。エリザベス・ドラフリー『カリブ文学と環境世界』(2005年)、同『ポストコロニアル・エコロジー』(2011年)などの成果を整理し、言語ではなく環境を中心としたアンティル海文学への分析の射程を明確化した。このような理論的成果を「風景」「歴史」「詩学」の観点からを総合することで、言語圏を超えた「環カリブ海文学」というパースペクティブが可能となる、そのような見通しを本年度は得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた資料調査のためのフランス出張は叶わなかったものの、それに代わり本研究の理論的基盤の整理を行ったことで、今後の研究の進展の理論的かつ具体的な展望が開けたため。
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Strategy for Future Research Activity |
世界的な感染状況を踏まえつつ、次年度はフランス・マルチニックへの資料調査を早い段階で進めるとともに、海外研究者の招聘についても計画を進め、研究ネットワークの構築をはかる。フランス語フランス文学会において、40年代のエメ・セゼールらの文学とエコロジーをめぐる発表を行うととともに、関連する国際学会での発表をめざす。
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