2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J21434
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤井 なつみ 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 演劇検閲 / 興行取締 / 地方警察 / 歌舞伎 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度には新型コロナウイルス感染拡大の影響によって断念せざるを得なかった地方調査を精力的に行い、大正期、昭和期における演劇検閲関係史料を中心に収集した。具体的には、各務原市歴史民俗資料館において、市川百十郎旧蔵検閲済み脚本及び興行日記の重点的な調査を行ったほか、山口県文書館、福岡県立図書館、熊本県立図書館、高知県公文書館などにおいても当該期の演劇検閲関係史料を収集した。 収集した史料の分析によって、これまでほとんど解明されてこなかった東京以外の地方における演劇検閲の在り方を徐々にではあるが明らかにすることができた。例えば、市川百十郎旧蔵検閲済み脚本の調査から、地方巡業時の脚本には、一冊の脚本に近隣の複数の府県の検閲印、加えて検閲による削除などの指示が書きこまれていることが多く、検閲官はほかの地方が下した検閲処分を参照しながら、自県の検閲を行う状況が存在していたことが明らかになった。同一の脚本に近隣の県がいかなる検閲処分を下しているのかという点は、検閲を行う上で検閲者の強く意識するところであったであろう。このことは近代日本演劇検閲の在り方を検討するうえで重要な視角となる。 以上のような調査を行ったうえで、前年度から引き続き検討してきた明治期の演劇検閲について、警視庁の検閲論理を中心に検討した論文を発表した。また、以上で述べたような大正期の演劇検閲の実態の検討に関しても、現在論文の執筆を終え、学術雑誌へ投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度と比べ、積極的に各地方の公文書館を訪問し史料調査を行うことができ、各地方における演劇検閲の在り方を検討しうる検閲済み脚本や警察関係史料など、多岐にわたる史料を収集した。また、これらの史料の検討の結果明らかにしえた、大正期の演劇検閲における各地方間の関係性に関する報告を国際ワークショップにおいて行うことができたため、成果の発信という点に関しても計画の目標はおおむね達成したといえる。また、本年度の成果をまとめた学術論文の執筆作業もほぼ完了しており、学術雑誌へ投稿予定である。以上が本年度の進捗状況の評価理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度と同様、積極的に各地方の演劇検閲関係史料の調査を行っていく。また、翌年度では昭和戦時期における演劇検閲の実態も検討していく計画のため、史料の残存状況が他の時期に比して厳しい状況となることが予想される。その点に関しては、これまでの調査の経験をもとに、データベースや検索システムを活用し、私文書も含め、効率よく少しでも多くの史料を収集することでカバーしていきたい。そのうえで、昭和戦前期、そして戦時期における演劇検閲の展開を検討した成果を論文化し、発信していきたい。
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Research Products
(2 results)