2022 Fiscal Year Annual Research Report
中国におけるソーシャル・メディアと権力-批判的アプローチから
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21J40094
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
工藤 文 早稲田大学, 政治経済学術院, 特別研究員(RPD) (80779067)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 中国 / ソーシャル・メディア / プラットフォーム / 内容分析 / 新民報 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、2021年度に得た成果を元に、3つの研究成果を出すことができた。 第1に、中国のソーシャル・メディアに関する研究会を企画し、批判的アプローチと事例研究、ビッグデータ分析との接点を探った。研究会における個人報告では、「中国ソーシャル・メディア研究の現在―批判的視座から」というテーマで報告を行った。ソーシャル・メディア研究における二つの潮流をビッグデータ分析と批判的研究に整理し、批判的研究の立場から中国のソーシャル・メディアプラットフォーム企業の資本主義的問題点を提示した。この上で、異なる分析手法の研究者による共同研究により、中国のソーシャル・メディアのテキストが持つ統制・抵抗・商品という側面について全体像を示すべきであると提起した。 第2に、2021年度に行った学会報告の成果を元にした論文が、査読付き論文として『メディア研究』101巻に掲載された(中山敬介氏との共著)。この論文では、計量テキスト分析のうち半教師あり学習の手法を用いて記事の長期的な内容の変容を実証的に示した。この分析手法に基づき、研究をソーシャル・メディアの分析に発展させる予定である。 第3に、2022年11月に行われた日本メディア学会秋季大会において報告を行った。この報告では、『新民報(晩刊)』上海版の公私合営化過程を対象に、事例分析と内容分析を行い、1950年代と現代のメディア統制制度の関連性を考察した。分析の結果、1950年代において、時事ニュースは新華社による記事配信、娯楽ニュースは『新民報』が独自の報道を行うという二元的な報道体制ができあがったことを明らかにした。このような二元的な報道体制は改革開放以降の『新民晩報』にも引き継がれ、娯楽ニュースに注力する『新民報』は自身が党の宣伝機関であることを隠し、現在に至るまで党の主張やイデオロギーを宣伝し続けてきたことを批判的に考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年3月8日(水)に早稲田大学にて、「中国ソーシャル・メディア研究の今―理論と方法の接合を目指して―」と題する研究会を企画し、対面およびZOOMによるハイブリットで開催した。中国のソーシャル・メディア研究を代表する研究者ら3名とともに実施した。この研究会で、中国のソーシャル・メディアに関する研究会では、報告者および参加者とともに現代中国政治とソーシャル・メディアの関係について議論を行い、今後の研究の方向性を示すことができた。併せて査読付き論文1本、学会報告1件の成果に結びつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、これまでに行った先行研究のレビューや理論的研究に基づき、ソーシャル・メディアのテキストを対象にした実証的な分析を行う。これによって、ソーシャル・メディアにおいて党の権力がどのように反映されているのか検討し、研究を発展させる。
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