2022 Fiscal Year Annual Research Report
学習者の選好が模倣に寄与するメカニズム:鳥の音声模倣に着目して
Project/Area Number |
22J00375
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤井 朋子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 模倣学習 / 選好 / 音声 / 鳴禽 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小鳥(キンカチョウ)の幼鳥が成鳥から歌を模倣することに着目し、学習者の選好がどのように模倣を促進するか検証するものである。2022年度は、まず歌の選好に関わる神経回路を同定するため、キンカチョウの脳に神経トレーサーを注入し、情動の中枢と考えられる扁桃体と結合する脳領域を調べた。中隔、海馬、視床下部などとの連絡が確認されたが、扁桃体への聴覚入力源を引き続き探索している。また、幼鳥における選好と学習の関係について行動レベルの検証を開始した。歌の呈示と連合させたキー押し行動を指標として歌の選好を測定する実験系を用い、新しい歌が導入されるとキー押しの回数が増加し、その歌を自身の発声に取り入れる事例が観察された。さらに、微小透析法で扁桃体を薬理的に抑制することで、選好に変化がみられるかを検討したが、微小透析プローブの設置自体が鳥のキー押し活動に影響することも懸念された。そこで、歌を受動的に再生する方法や、成鳥から直接歌を聞かせる方法も導入した。成鳥と幼鳥の行動を一日中記録し、音声や位置情報を網羅的に解析することで、呈示された音声への反応だけでなく、鳥同士の相互作用にも分析の対象を広げた。この実験系でも、新たな成鳥がケージに導入されると幼鳥は接近行動の増加など興味を示すこと、成鳥が歌っている最中には幼鳥の動きが減少し、注意を向けていることなどが確認されているが、こうした行動と歌学習の関連性およびその神経メカニズムについてはこれから研究を進めていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初、1年目に予定していた光遺伝学実験には未着手であるが、キンカチョウの扁桃体を標的とした神経回路同定、歌の選好を測定する行動実験系の立ち上げについて、一定の進捗が得られているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、幼鳥の歌に対する選好、あるいは歌の手本をうたう成鳥への選好の神経基盤を調べる実験に着手する。まず、研究計画において選好にかかわると予測した扁桃体を薬理的に損傷もしくは抑制し、幼鳥の行動の変化を検討する。同時にキンカチョウに対して光遺伝学的な神経活動操作を適用するための準備(ウイルスベクターを用いた光感受性タンパク質の発現など)を行う。歌が再生されるキー押しの頻度や、成鳥との相互作用に変化が認められれば、扁桃体と結合する特定の脳領域を標的として、ある神経回路を選択的に光遺伝学操作する実験を試みる。この実験により、神経回路のどの段階で歌の選好の情報が符号化され、それが行動として出力され、最終的に歌の模倣学習に関わるかどうかを検討する予定である。
|