2023 Fiscal Year Research-status Report
学習者の選好が模倣に寄与するメカニズム:鳥の音声模倣に着目して
Project/Area Number |
22KJ2905
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤井 朋子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 模倣学習 / 選好 / 音声 / 鳴禽 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、鳴禽類(キンカチョウ)の幼鳥が成鳥から歌を模倣することを利用し、学習者の選好が模倣を促進するメカニズムを検証することを目的としている。とくに、社会行動の制御に重要とされる扁桃体に着目して、その神経回路と、歌学習における機能を調べる計画である。まず、前年度に引き続き、キンカチョウの扁桃体に神経トレーサーを注入し、結合する脳領域の探索を行った。すでに確認していた中隔への投射、海馬との双方向的結合に加え、内側膝状体に相当する視床の神経核(nucleus ovoidalis)が逆行性に、中脳の丘間核(intercollicular nucleus)が順行性に標識された。前者が扁桃体への聴覚入力源、後者が扁桃体からの出力を受けて発声などの制御を行う部位の候補と考えられた。さらに、幼鳥の歌学習の過程に扁桃体がどのように関与しているかを調べるため、イボテン酸による扁桃体の損傷実験を実施した。1羽の幼鳥を、2羽の異なる成鳥と連続して同居させて歌を聞かせ、それぞれの成鳥と過ごした間にどのような行動をとっていたか、およびどちらの成鳥から歌をよりよく学習したかを分析した。通常幼鳥は、成鳥が長い時間集中的に歌っているときにはケージ内での移動量を減少させ、他の行動を止めて成鳥の歌に注意を向けている可能性が示唆された。また、同居を開始した日には、単独飼育時と比べて成鳥ケージに近づいて過ごす時間が増えたが、3日間の同居期間のなかで接近が次第に減少した。いっぽう扁桃体を損傷した幼鳥では、この接近の減少が低く、同居期間中の後半でも成鳥ケージの近くで過ごす傾向が見られた。接近行動の変化の大きさは、扁桃体の損傷領域の大きさと相関した。しかし、損傷群の幼鳥も、通常の幼鳥と同じように歌を学習することができ、成鳥との相互作用と歌学習の関連性は現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画当初に想定していた、扁桃体から中脳水道灰白質のドーパミン細胞への投射が確認できなかったため研究計画を変更したが、損傷実験によって、幼鳥が成鳥と社会的な相互作用をする際の扁桃体の機能について一定の結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに行った、扁桃体の損傷個体の行動実験と、扁桃体と他の脳領域の結合を調べた実験の結果について論文化を進める。また、新たに確認された扁桃体と視床聴覚核や中脳の発声制御核の神経回路について、より詳細に機能を検討していく。
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Causes of Carryover |
国際学会参加を見送ったため。また論文化着手の遅れにより英文校閲費が発生しなかったため。
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Research Products
(1 results)