2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J10829
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
池田 泉 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 日本美術史 / 近世絵画 / 土佐派 / 土佐光起 / 名所絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、17世紀の宮廷御用絵師・土佐光起の画作の特徴と活動実態を明らかにすることである。土佐派は南北朝時代に成立して以来、室町時代および江戸時代前期から幕末まで宮廷絵所預の地位を継承し、やまと絵制作の中核を担った。ところが江戸時代の御用絵師の多くはその芸術的価値が長らく認められず、光起に関してもいくつかの作品研究はあるものの、いまだ重要作例の詳細な調査・分析が不十分で、画業の全体像や画風、落款・印章の変遷が明らかにされていない。申請者は、現存する光起作例の網羅的かつ体系的な作品調査・研究を目指している。 そこで本年度は以下の作業を行った。 1.現存作品のデータ収集:土佐光起の現存作品の情報と画像を、展覧会図録や調査報告書などから収集した。年度末の段階で計180点にのぼっており、今後の近世土佐派研究における基礎的データとなるものと考えられる。またこれを踏まえて今後個別に調査・研究すべき重要な作品をピックアップした。 2.落款・印章の整理:収集した作品のうち重要なものを中心として、落款・印章の整理を行った。結果として、新たに画業早期における落款・印章の特徴を捉えることに成功した。翻って、これまで制作時期不明とされた作品のうち、落款書体の特徴から早期と位置付けるべき作品を10点確認した。 3.「粟穂鶉図屏風」(東京国立博物館蔵)をめぐる研究:重要な研究対象の一つである「粟穂鶉図屏風」について、その制作背景を考察するため、伝来した会津松平家の記録『家世実紀』を通覧した。『家世実紀』からは本屏風についての情報は得られなかったものの、会津松平家から土佐光起に発注された作品の記録を一点新たに見出し、両者の直接的な関係を裏付けることができた。また、この屏風左隻の景観について再検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した現存作品のデータ収集について、想定以上の作品情報を集めることができた。また、落款・印章の整理についても、予想以上の成果が得られた。 一方、作品の調査に関しては当初の計画ほど実施できていない。調査できていない分は次年度に繰り越して行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
収集したデータをもとに、重要と考えられる作品を中心に調査を実施する。それと並行して、落款・印章の整理を引き続き行う。本年度は土佐光起の画業早期についてのみ、その特徴が明らかになった。それ以降の落款・印章についての検証が進まなかったのは、大きな変化や特徴がみられなかったからである。そこで本年度は画風と併せて考察し、各作品の制作時期の編年を試みる。
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Research Products
(1 results)