2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of crystal actuators driven by natural vibration
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22J22384
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
長谷部 翔大 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 結晶アクチュエータ / 光熱効果 / 固有振動 / 共振 / サリチリデンアニリン / ソルベントグリーン |
Outline of Annual Research Achievements |
光を当てると屈曲などの巨視的な動きを示すフォトメカニカル結晶はアクチュエータやソフトロボットへの応用が期待されている。しかしその大部分は光異性化に基づいており、対象の結晶が限定されるほか、動きが遅い、紫外光でしか動かせないなどの欠点があった。2020年に当研究グループは光が熱に変わる「光熱効果」によって結晶が高速で動くことを発見し、光を吸収するあらゆる結晶を高速で動かせる可能性が示唆された。しかしながら光熱効果による屈曲は動きが小さい欠点があった。ごく最近、当研究グループは光熱効果により固有振動が誘起・共振され、結晶が高速でかつ大きく屈曲する現象を初めて発見した。本研究では光熱効果で固有振動を誘起・共振させることで、高速でかつ大きく動く多種多様な結晶アクチュエータを開発し、有機結晶のメカニカル材料としての可能性を拡大する。 2022年度は高速かつ高効率な動きを創出するため o-アミノサリチリデンアニリン結晶に注目し、780 Hzの紫外パルス光を照射することで、780 Hzの高速屈曲を達成した。エネルギー変換効率は0.22%であり、既報のフォトメカニカル結晶の中で最も高い効率を達成した。また可視光で動く結晶を開発するため、紫外領域に加え、可視、近赤外光の広い領域 (400-850 nm) に吸収をもつソルベントグリーン結晶に注目し、紫外光のみならず可視光や近赤外光、さらに連続光を含むハロゲンランプでも高速で大きな動きの創出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は2021年度にo-アミノサリチリデンアニリン結晶が紫外光を当てると光熱効果により500 Hzの高速で屈曲することを見出した (J. Am. Chem. Soc. 2021, 143, 8866-8877) が、固有振動による動きは未検討であった。板状結晶の一端を固定し上面に紫外光を当てると、光熱効果による 1.5°の屈曲に付随して、微小な固有振動(~0.2°, ~773 Hz) が生じた。780 Hzのパルス光を照射すると共振により屈曲角が7.0°と大きく増幅された。エネルギー変換効率は0.22%であり、既報のフォトメカニカル結晶の中で最も高い効率を達成した。 続いて、紫外光のみならず可視光や近赤外光でも動く結晶を開発するため、400 nm未満の紫外領域から可視、近赤外光の広い領域 (400-850 nm) まで吸収をもつソルベントグリーン結晶に注目した (Chem. Mater. 1997, 9, 1319-1327) 。粉末X線回折測定の結果、a軸方向に220 MK-1の大きな熱膨張を示すこと、3点曲げ試験の結果、弾性変形を示すことがわかった。以上の結果より、ソルベントグリーン結晶は紫外光のみらなず可視光や近赤外光で大きく、しなやかに動くことが期待された。一端を固定した針状結晶の上面に紫外光を照射すると、光熱効果による 1.1°の屈曲に付随して、~70 Hzの固有振動が見られた。70 Hzの紫外パルス光を照射すると共振により屈曲角が11°まで増幅された。この屈曲は450 nmの青色光、520 nmの緑色光、638 nmの赤色光、810 nmの近赤外光でも誘起できた。さらに400-2000 nmの波長の連続光を含むハロゲンランプでも、高速で大きな屈曲を創出できた。 また再沈法を用いて形状・サイズの揃ったm-ニトロサリチリデンアニリン結晶の作成にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
o-アミノサリチリデンアニリン結晶については、結晶サイズと屈曲挙動 (屈曲角、振動数、速度、エネルギー変換効率) の関係を解明するほか、有限要素法による屈曲シミュレーションを解析ソフトウェアのANSYSを用いて実施する。また固有振動数が結晶の長さの2乗に反比例し厚さに比例することを踏まえ、短く厚い結晶に注目し、2022年度に達成した780 Hz、0.22%のエネルギー変換効率を上回る20,000 Hz、1%のエネルギー変換効率に挑戦する。 ソルベントグリーン結晶については屈曲挙動の波長依存性を明らかにするほか、太陽光による動きの創出にも挑戦する。また、これまでの実験は結晶の一端が固定端、他端が自由端のカンチレバーの屈曲運動を観察したが、中央部分を一箇所固定した場合や、両端を固定した場合の動きも観察する。加えて、基板上に静置(両端自由)した結晶を固有振動で高速屈曲させることで基板上を<走る>結晶の開発に挑戦する。 以上の項目を実施しそれぞれ論文化を目指し、光熱誘起固有振動で駆動する結晶アクチュエータの可能性を拡大する。
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Research Products
(9 results)