2022 Fiscal Year Annual Research Report
齧歯類感覚系を対象とした、オキシトシンによる共感性応答の修飾機能解明
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21J01705
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
齋藤 優実 麻布大学, 動物応用科学科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | オキシトシン / 社会性行動 / 共感 / 情動弁別 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的、「オキシトシン受容体の社会性行動への関与と因果関係を解明する」のため、当該年度は以下の研究を行なった。オキシトシン受容体を欠損したノックアウトマウス(以下OTR-KOマウス)、受容体は脳内に存在するものの発現量が減少しているマウス(OTR減少マウス)、通常の野生型の三種類の遺伝子型を、OTR-venusマウス系統を用いて作出し、青年期における社会性行動と、非社会性文脈の各種行動実験によって比較した。 社会性行動の測定は以下の二種類のアッセイを用いた。まず他個体が恐怖行動を見せた際、共感的に自身も恐怖指標を上昇させる「観察恐怖」である。また、ケージメイト二個体のうち、片方に恐怖や痛み経験を与え、もう一方には何も与えない中立状態にした時、通常であればテストマウスは恐怖経験をしたケージメイトに対する興味が限局する「情動弁別」も観測した。これら二種の社会性行動は、先行研究の通り野生型では見られたものの、OTR減少マウスで社会性行動も減少し、さらにOTR-KOマウスで最も少なかった。この知見は新規性の高い発見であり、研究目的に沿う結果となった。 一方、社会性に関係のない「高架式十字迷路試験」「オープンフィールド試験」そして「恐怖条件づけ」を社会性行動アッセイの後に実施したところ、遺伝子型による恐怖・不安傾向の差はほぼ見られなかった。このことから、OTRは社会性文脈や共感における恐怖にのみ関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はプロポーザル時点ではマウスおよびラットを用いる予定であったが、初年度の段階でラットに対するオキシトシン受容体の観察が難しいことが判明し、以降マウスの社会性行動に絞った研究計画に変更した。変更後の2年目(当該年度)において、このオキシトシン受容体を遺伝的に操作したマウス系統を作出し、各種社会性行動を測定し、十分なデータを得た。現在、この知見の論文化を進行中であることから、研究は概ね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究内容は、オキシトシン受容体(OTR)の存在する脳領域と社会性行動の因果関係を推定するため、DREADDSシステムによる化学遺伝学的手法を用いる。初年度で社会性行動に関与し、かつOTRが存在する脳領域を神経マーカーc-Fosとの共染色で特定したところ、前部帯状回、島皮質、扁桃体核が主に担っていることがわかった。これらの領域を対象にウィルスベクターをインジェクションし、導入した人工受容体によってOTR陽性ニューロンを活性化または抑制するよう操作を加える。ニューロンを人為的に活性化/抑制し、社会性行動が増加/減少するのかを調べることで、どの領域がどの社会性行動を具体的に制御しているか特定することを目指す。
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