2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J00959
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
桐原 尚之 同志社大学, 社会学部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 障害学 / 社会モデル / 社会運動 / 精神障害者 / 保安処分 / 現代史 / セルフヘルプ / ピアサポート |
Outline of Annual Research Achievements |
1990年代の全国「精神病」者集団事務局の急激な体制変化の歴史にかかわる調査については、全国「精神病」者集団の刊行物類、全国精神障害者団体連合会の刊行物類、ごかいの刊行物類を中心に資料調査をおこなった。1990年代に団体で活動をしていた精神障害者から聞き取り調査をおこなった。1989年、死刑囚だった赤堀政夫さんが無罪で釈放となり、ほどなくして大野萌子が介護をすることになった。全国「精神病」者集団は、大野萌子が管理していた名古屋事務所に居続けることが困難になり、京都事務所へと移転した。時を同じくして1993年に全国精神障害者団体連合会が結成した。全国「精神病」者集団の事務局内は、その評価をめぐって立場がわかれた。このような精神障害者同士の対立は、世界的にも頻繁にみられるものであり、”協調することが難しい人同士による組織”という観点から肯定的な意味付与をおこなった。 精神衛生実態調査反対以降の歴史にかかわる調査については、全国「精神病」者集団の刊行物類とおりふれ通信を中心に史料の調査をおこなった。精神衛生実態調査は、第3回調査(1973年)のときに大規模な反対運動があり、回収率がのびなかったことから事実上の頓挫という結果になった。第4回調査(1983年)は、調査方法こそ見直されたが、調査目的への疑問を理由に反対運動がおこり、再びとん挫することになった。厚生省は、精神衛生行政の基礎資料となる統計が不足を補うべく、全国精神障害者家族会連合会が実施した調査報告に依拠するようになっていった。精神科病院の実態については、『我が国の精神衛生』の一部であった統計データを1997年に630調査というかたちで調査結果を冊子にして公表した。行政が実施する調査に対する当事者団体の評価は、調査目的や調査方法が前提とするイデオロギーに対するものであったことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1990年代の全国「精神病」者集団事務局の急激な体制変化の歴史にかかわる調査については、全国「精神病」者集団の刊行物類、全国精神障害者団体連合会の刊行物類、前進友の会、ごかいの刊行物類を中心に資料調査をおこなった。京都、大阪、兵庫、福岡の関係者から聞き取り調査をおこなった。 精神衛生実態調査反対以降の歴史にかかわる調査については、全国「精神病」者集団の刊行物類とおりふれ通信を中心に史料の調査をおこなった。 現在、論文は執筆中であり、投稿には至っていない。調査は予定通り進んでいるが、論文の執筆が予定より若干遅れていることから、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
北海道、宮城県、山形県の聞き取り調査を行う。博士論文と特別研究員1年目の成果をあわせて『日本の精神障害者の社会運動の歴史』について単著を出版する。 台湾の精神障害者の社会運動の歴史にかかわる調査については、台湾障碍人協会の資料調査と関係者から聞き取り調査をおこなう。時期は、2023年4月~8月までとする。北京の精神障害者の社会運動の歴史にかかわる調査については、CNUSPの資料調査と関係者から聞き取り調査をおこなう。なお、調査対象者への承諾は、すでに得られている。時期は、2023年4月~8月までとする。 成果は、「台湾の精神障害者の社会運動」を査読論文にまとめ『解放社会学研究』(募集:2024年1月)に投稿する。*「北京の精神障害者の社会運動」を査読論文にまとめ『ソシオロゴス』(募集:2024年1月)に投稿する。
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